判旨
判決後、上告審での職権調査により、所得税法違反および労働基準法違反の罪が昭和27年政令第117号大赦令の対象となった場合、裁判所は刑訴法337条3号に基づき免訴を言い渡すべきである。一方、大赦の対象外である失業保険法違反については、適法な上告理由がない限り、第一審の認定した事実に基づき刑を科すのが相当である。
問題の所在(論点)
上告審の継続中に、公訴事実の一部について免訴事由である大赦があった場合、裁判所はどのような措置を講ずべきか。また、大赦の対象とならない残余の罪について、適法な上告理由がない場合の処理はどうあるべきか。
規範
1. 判決後に大赦があったときは、刑事訴訟法411条5号に基づき職権で判決を破棄し、同法337条3号に従って免訴を言い渡さなければならない。 2. 数個の公訴事実のうち一部が免訴事由に該当する場合でも、残余の罪については別途法令を適用し、刑を確定させる必要がある。 3. 上告趣意が刑訴法405条の上告理由に該当しない場合、実体判断に踏み込む必要はない。
重要事実
被告人A、Bおよび被告会社は、所得税法違反、労働基準法違反、および失業保険法違反の罪に問われ、下級審で有罪判決を受けていた。上告中に「昭和27年大赦令」が公布・施行された。弁護人は失業保険法違反について上告を申し立てたが、その内容は単なる法令違反の主張にとどまるものであった。また、所得税法違反および労働基準法違反の点についても上告および受理申立てがなされていた。
あてはめ
1. 職権調査の結果、被告人らの所得税法違反および労働基準法違反の事実は、昭和27年政令第117号大赦令の対象に含まれることが明らかである。したがって、刑訴法411条5号により原判決を破棄し、免訴の言い渡しを要する。 2. 失業保険法違反については、大赦の対象外である。弁護人の上告趣意は刑訴法405条に定める適法な上告理由(憲法違反や判例相反等)に該当しないため、失業保険法違反については第一審の認定した犯罪事実を維持し、これに罰金刑を適用するのが妥当である。
結論
所得税法違反および労働基準法違反については免訴とする。免訴されない失業保険法違反については、被告人AおよびBを各罰金五千円、被告会社を罰金五万円に処する。
実務上の射程
本判決は、複数の罪で起訴されている場合に一部のみに免訴事由が生じた際の「一部免訴・一部有罪」の処理実務を示すものである。答案上は、刑訴法337条(免訴判決)の事由が上告審で判明した際の職権調査義務および判決の主文構成を確認する際に参照される。特に、大赦という手続的解消事由と実体的な有罪判断が併存する場合の形式的な処理手順として重要である。
事件番号: 昭和25(あ)3182 / 裁判年月日: 昭和27年11月18日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】判決後に大赦令(昭和27年政令117号)が公布された場合、公訴事実のうち当該大赦の対象となる罪については、刑事訴訟法337条3号に基づき免訴を言い渡すべきである。 第1 事案の概要:被告人は所得税法違反および取引高税法違反の罪で起訴され、第一審および控訴審で有罪判決を受けた。被告人が上告していたと…
事件番号: 昭和24新(れ)169 / 裁判年月日: 昭和27年6月18日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】大赦令の施行により公訴事実に係る罪が大赦の対象となった場合には、刑事訴訟法337条3号に基づき免訴の言渡しをしなければならない。 第1 事案の概要:被告人である小久保産業株式会社およびその代表者は、法人税法違反および所得税法違反の罪に問われ、第一審および控訴審で有罪判決ないし控訴棄却判決を受けた。…
事件番号: 昭和27(れ)41 / 裁判年月日: 昭和27年11月11日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】刑事被告事件の係属中に大赦がなされた場合、当該公訴事実については実体審理を継続できず、刑事訴訟法に基づき免訴の判決を言い渡さなければならない。 第1 事案の概要:被告人は、昭和22年から23年にかけて、①繊維製品配給消費統制規則に違反して衣料品を販売譲渡し(臨時物資需給調整法違反)、②労働者に対し…