判旨
刑事被告事件の係属中に大赦がなされた場合、当該公訴事実については実体審理を継続できず、刑事訴訟法に基づき免訴の判決を言い渡さなければならない。
問題の所在(論点)
刑事被告事件の審理中に大赦がなされた場合、裁判所はどのような裁判を行うべきか。特に、原判決の有罪部分の存否および免訴の要否が問題となる。
規範
被告事件について、大赦があったときは、刑事訴訟法337条1号(旧刑事訴訟法363条3号)に基づき、判決で免訴の言渡しをしなければならない。これは公訴権が消滅し、裁判所が実体的な有罪・無罪の判断を下すことができなくなるためである。
重要事実
被告人は、昭和22年から23年にかけて、①繊維製品配給消費統制規則に違反して衣料品を販売譲渡し(臨時物資需給調整法違反)、②労働者に対し法定労働時間を超える労働や休憩・休日の不付与等の行為を行った(労働基準法違反)。また、③日本刀二口を不法に所持していた(銃砲刀剣類等所持禁止令違反)。第一審・控訴審で有罪とされたが、上告審の係属中に、昭和27年政令第117号(大赦令)が公布・施行された。
あてはめ
本件における臨時物資需給調整法違反および労働基準法違反の各公訴事実については、昭和27年政令第117号1条10号および88号により大赦の対象となった。大赦が認められる以上、旧刑事訴訟法363条3号(現337条1号)に該当するため、原判決のうち当該有罪部分は破棄を免れない。裁判所は実体的な有罪・無罪の審理をこれ以上継続することはできず、公訴権消滅の結果として免訴を言い渡すべきである。なお、大赦の対象外である銃砲刀剣類等所持禁止令違反の事実については、別途法令を適用し有罪を維持する。
結論
原判決の有罪部分を破棄する。大赦のあった各事実(臨時物資需給調整法違反、労働基準法違反)については免訴とし、大赦の対象外である事実については罰金刑に処する。
事件番号: 昭和26(あ)568 / 裁判年月日: 昭和27年10月28日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】公訴事実の一部について大赦があった場合には、裁判所は刑事訴訟法337条3号に基づき免訴の判決を言い渡すべきである。本件では、臨時物資需給調整法違反の罪について大赦がなされたため、当該部分を免訴とした上で、残る罪名について刑を科した。 第1 事案の概要:被告人は臨時物資需給調整法違反および銃砲等所持…
実務上の射程
大赦・時効の完成・確定判決がある場合など、刑事訴訟法337条各号の免訴事由が判明した場合の処理を示す。司法試験上は、公訴棄却(338条・339条)との区別や、免訴事由がある場合に無罪判決を出すことができるか(免訴優先か無罪優先か)という議論において、形式裁判の原則を確認する際の基礎となる判例である。
事件番号: 昭和26(あ)2814 / 裁判年月日: 昭和27年12月9日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】被告人の行為時において処罰の根拠となっていた法令が、その後の政令等による大赦の対象となった場合、裁判所は刑訴法337条3号に基づき免訴の言渡しをすべきである。 第1 事案の概要:被告人は臨時物資需給調整法違反および屠場法違反の罪で起訴され、第一審および控訴審において有罪判決を受けていた。しかし、上…
事件番号: 昭和27(あ)1528 / 裁判年月日: 昭和27年11月13日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】数個の罪が併合罪の関係にある場合において、その一部の罪についてのみ大赦があったときは、大赦の対象となった罪について免訴を言い渡し、残余の罪について刑を科すべきである。 第1 事案の概要:被告人Aおよび被告会社は、臨時物資需給調整法および石油製品配給規則に違反する複数の罪(別紙一覧表記載の1〜42の…
事件番号: 昭和27(あ)2732 / 裁判年月日: 昭和28年11月10日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】原判決後に大赦令が公布された場合、刑事訴訟法411条5号に基づき職権で原判決を破棄し、大赦の対象となった事実については免訴を言い渡すべきである。その他の罪については、併合罪として処断し、罰金刑を選択した上で適正な刑を科すのが相当である。 第1 事案の概要:被告人は、石油製品の違反譲渡(石油製品配給…
事件番号: 昭和26(あ)5172 / 裁判年月日: 昭和27年11月7日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】公訴事実の一部について大赦があった場合、裁判所は刑事訴訟法に基づき職権で判決を破棄し、当該部分について免訴を言い渡さなければならない。 第1 事案の概要:被告人A及びBは、臨時物資需給調整法及び石油製品配給規則に違反し、タービン油を譲り受け、かつ譲渡した事実(公訴事実の一部)等について有罪判決を受…