原判決が認定した事実は起訴状中の訴因に掲げられていたと認められるとして憲法三一条、三二条違反の主張が欠前提とされた事例
憲法31条,憲法32条
判旨
判決において認定された犯罪事実が起訴状の訴因として掲げられている場合には、当該認定により憲法31条(適正手続)や同32条(裁判を受ける権利)に違反することはない。
問題の所在(論点)
裁判所が認定した事実が起訴状の訴因に含まれている場合に、憲法31条(適正手続)および32条(裁判を受ける権利)違反の主張が認められるか。
規範
裁判所が犯罪事実を認定するに際して、それが起訴状に記載された訴因の範囲内にある限り、被告人の防御権を侵害するものではなく、憲法31条の定める適正な手続および憲法32条の裁判を受ける権利に抵触しない。
重要事実
被告人らは労働基準法違反の罪で起訴された。原判決が認定した犯罪事実は、起訴状に訴因として掲げられていたものであったが、弁護人は当該認定が訴因の範囲を逸脱し、憲法31条および32条に違反すると主張して上告した。
あてはめ
記録によれば、原判決が認定した労働基準法違反の事実は、あらかじめ起訴状に訴因として掲げられていた。したがって、裁判所は検察官が提示した攻撃の範囲内で判断を示したといえ、被告人の防御の対象は明確に限定されていたと解される。これに反する弁護人の主張は前提を欠くものである。
結論
原判決の事実に憲法違反はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
刑事訴訟において訴因と認定事実の同一性が争点となる際、訴因の範囲内での認定であれば憲法違反の余地がないことを示す極めて簡潔な判示である。答案上は、訴因変更手続の要否(刑訴法312条1項)を論ずる際、適正手続の保障という観点から、訴因が被告人の防御範囲を画定する機能を果たしていることを補強する根拠として活用できる。
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