判旨
裁判所は、当事者が申請した証人をすべて調べる義務を負うものではない。労働基準法33条の事態が存在しないと認定される場合、同条に基づく免責を主張する証拠調べ請求を退けても適法である。
問題の所在(論点)
刑事訴訟において、当事者が申請した証人を裁判所が採用しなかったことが、憲法や刑事訴訟法(335条2項、405条、411条等)に違反し、上告理由となるか。特に労働基準法33条の事態の有無に関する証拠調べの要否が問題となる。
規範
裁判所は、当事者が申請した証人のすべてを調査しなければならない義務を負うものではない。事案の真相解明に必要でないと判断される証拠について、裁判所は証拠調べを省略する裁量を有し、それによって直ちに憲法違反や手続違背が生じるものではない。
重要事実
被告人が労働基準法違反の罪に問われた事案において、被告人側は同法33条(災害時等の時間外労働)の事情があったと主張し、その立証のために証人の尋問を申請した。しかし、原審は証拠に基づき、同条所定の事態は存在しなかったと事実認定を行い、申請された証人の尋問を行わなかった。
あてはめ
原審が挙示する各証拠によれば、原判決の認定事実に誤りはなく、労働基準法33条が規定する「災害その他避けることのできない事由」等の事情は認められない。したがって、同条の適用を前提とした証人尋問の必要性は否定される。裁判所が証拠採用の是非を判断することは裁量の範囲内であり、申請された証人をすべて調べなかったとしても、憲法違反や判決に影響を及ぼすべき重大な事実誤認があるとはいえない。
結論
本件各上告を棄却する。裁判所が申請された証人の一部を調べなかったとしても、直ちに憲法違反や違法な手続とはならない。
実務上の射程
証拠決定の自由(裁判所の証拠採用に関する裁量権)を認めた判例である。答案上は、証拠調べ請求が却下されたことの適法性を論じる際、裁判所の裁量を肯定する根拠として引用できる。ただし、公判前整理手続下の現代の実務では、証明予定事実の関連性や必要性の判断がより厳密になされる点に留意が必要である。
事件番号: 昭和49(あ)1916 / 裁判年月日: 昭和49年12月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決において認定された犯罪事実が起訴状の訴因として掲げられている場合には、当該認定により憲法31条(適正手続)や同32条(裁判を受ける権利)に違反することはない。 第1 事案の概要:被告人らは労働基準法違反の罪で起訴された。原判決が認定した犯罪事実は、起訴状に訴因として掲げられていたものであったが…
事件番号: 昭和25(あ)656 / 裁判年月日: 昭和28年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が保障する「公平な裁判所」とは、裁判所の組織および構成が不公平または偏頗(へんぱ)でない裁判所を指し、裁判の内容や手続が当事者から見て不公平に思われるものを指すものではない。 第1 事案の概要:被告人が、第一審判決に事実誤認、法令違反、または訴訟手続の違背があるとして上告した事案。弁…