判旨
憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」とは、刑罰の性質が人道的見地から不当に酷烈であることを意味するが、事実誤認や量刑不当の主張は適法な上告理由に当たらない。
問題の所在(論点)
被告人が主張する事実誤認や量刑不当の訴えが、憲法36条の「残虐な刑罰」に該当するか、および刑事訴訟法405条所定の適法な上告理由となるか。
規範
憲法36条にいう「残虐な刑罰」の意義については、刑罰がその性質において人道的見地から不当に酷烈と認められるものを指す(最大判昭23・6・23参照)。また、刑事訴訟法405条の上告理由に該当しない事実誤認や単なる量刑不当の主張は、憲法違反を名目とするものであっても上告理由を構成しない。
重要事実
被告人は有罪判決を受け、その量刑等が不当であるとして上告した。上告趣意において、被告人および弁護人は、憲法違反(残虐な刑罰の禁止違反)および判例違反を主張したが、その実質的な内容は事実の誤認および量刑の不当を訴えるものであった。
あてはめ
本件の上告論旨は、憲法違反を主張する形をとってはいるものの、その実体は裁判所の事実認定の誤りや宣告された刑の重さを争う事後的・事実的な不服申し立てにすぎない。最高裁判所の大法廷判決が示した「残虐な刑罰」の定義に照らしても、本件の主張内容はこれに該当するような刑罰の性質そのものの酷烈さを問うものではなく、刑事訴訟法405条の定める限定的な上告理由(憲法違反・判例違反等)には該当しないといえる。
結論
本件上告は刑訴法405条の上告理由に当たらないため、同法414条、386条1項3号により棄却される。
実務上の射程
憲法36条の「残虐な刑罰」を論じる際の定義(人道的見地からの不当な酷烈性)を引用する基礎となる。答案上は、量刑の当不当を争う実質を持つ主張を憲法問題へすり替える「名目的憲法違反」の主張を排斥する文脈で、上告審の構造を説明する際に利用できる。
事件番号: 昭和26(れ)712 / 裁判年月日: 昭和26年8月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】量刑不当の主張は刑事訴訟法405条の上告理由に該当せず、職権調査の必要性も認められない場合は上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人が量刑不当を理由として最高裁判所に上告を申し立てた事案。弁護人は、第一審または控訴審の量刑が重すぎることを上告理由として主張した。 第2 問題の所在(論点)…
事件番号: 昭和27(あ)5210 / 裁判年月日: 昭和28年3月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審で主張・判断されていない第一審の訴訟手続違背を上告理由とすることはできず、また、事実誤認を前提とした憲法違反の主張や単なる量刑不当の主張は適法な上告理由に当たらない。 第1 事案の概要:被告人が第一審の判決に対し控訴したが、控訴審判決後、上告審において新たに第一審の訴訟手続に違反がある旨を主…