所論の将校指揮刀が仮りに全然刃を有しない単に刀剣の形を持つた鉄片に鍍禁したに過ぎないもので銃砲等所持禁止令にいわゆる刀剣類に属さないものであるとしても、原審の是認した第一審判決によれば被告人は判示多数の日本刀と共に所論の将校指揮刀を所持したものとして所罰されたものであつて、右指揮刀所持の点は判示全犯行に対比して極めて軽微な一部をなすに過ぎないのであるから、所持につき前示禁止令を適用した違法は同判決の主文の帰結には何等の影響をも与えなかつたものということができる。
法令適用の違背があつたとしても判決に影響を及ぼさない一事例
銃砲等所持禁止令1条,銃砲等所持禁止令2条,刑訴法411条
判旨
判決に影響を及ぼすべき法令の違反がない場合、上告理由は認められない。数個の物件の所持が一つの犯罪を構成する場合、その一部に法令適用の誤りがあっても、それが犯行全体に比して極めて軽微であり、主文の結論に影響を与えないときは、原判決を破棄する理由にはならない。
問題の所在(論点)
数個の物を所持した包括的な犯行において、その一部の物件が法令の規制対象外であった場合、その事実誤認または法令適用の誤りは判決の破棄理由となるか。
規範
刑事訴訟法における上告理由としての法令違反(同法405条、411条等)は、その違反が判決の結論(主文の帰結)に直接の影響を及ぼすものであることを要する。不可分な一罪として処断される事案において、構成事実の一部に誤認または適用の不当があっても、それが全体の犯情と比較して極めて軽微であり、量刑や結論を左右しない程度のものであれば、判決に影響を及ぼすべき法令違反には当たらない。
重要事実
被告人は、多数の日本刀と共に将校指揮刀を所持したとして、銃砲等所持禁止令違反で処罰された。弁護人は、当該将校指揮刀が刃を有しない鉄片に鍍金したに過ぎず、同令の「刀剣類」に該当しないため、法令適用の誤りがあると主張して上告した。
事件番号: 昭和25(あ)1217 / 裁判年月日: 昭和26年4月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑訴法411条は、上告理由を定めたものではなく、最高裁判所が職権によって原判決を破棄できる事由を定めた規定である。 第1 事案の概要:被告人は食糧管理法違反等の罪で起訴され、第一審および控訴審で有罪判決を受けた。弁護人は上告審において、第一審判決の併合罪(刑法47条)の適用に関し、どの罪を最も重い…
あてはめ
仮に指摘の将校指揮刀が刀剣類に属さないものであったとしても、被告人は判示の通り、他にも多数の日本刀を併せて所持していた。本件の全犯行内容と比較すると、当該指揮刀の所持という事実は極めて軽微な一部を構成するに過ぎない。したがって、この点に法令適用の違法があったとしても、判決主文の帰結には何ら影響を及ぼすものではないと評価される。
結論
被告人の行為のうち、主たる部分は日本刀の所持により禁止令違反を構成しており、一部の物件に関する判断の誤りは判決の結論を左右しないため、上告は棄却される。
実務上の射程
司法試験の刑事訴訟法において、事実誤認や法令違反が「判決に影響を及ぼすべき」ものか否かを論じる際の判断指標となる。包括一罪や複数の事実が重なる場合に、一部の軽微な瑕疵を理由として原判決を破棄することの妥当性を否定する論拠として活用できる。
事件番号: 昭和26(れ)157 / 裁判年月日: 昭和26年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実誤認または量刑不当の主張は、刑訴応急措置法13条2項に基づき、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が原判決に対して上告を申し立てた事案。弁護人が提出した上告趣意書において、原判決における事実の認定に誤りがあること、および、宣告された刑の量定が不当に重いことを主張した。 第2…