酒精度の証明は必しも鑑定によることを要しない。
酒精度の証明と鑑定の要否
酒税法2条,刑訴法165条
判旨
酒税法違反における酒類製造の事案において、酒精度の証明は必ずしも鑑定によることを要しない。また、同法が未遂罪を既遂罪と同様に罰すると定めている以上、製造目的でその手段を終了したならば、製品が完成していなくとも可罰性に影響はない。
問題の所在(論点)
1. 酒税法違反における酒精度の証明に、専門家による鑑定は必須か。 2. 製品が未完成(未遂)であった場合、酒税法違反としての可罰性に影響があるか。 3. 補強証拠の存否と自白のみによる処罰の禁止(憲法38条3項)の関係。
規範
1. 犯罪事実の認定に必要な証拠に関し、特定の事項(酒精度の有無等)の証明は必ずしも専門的な鑑定によることを要せず、諸般の証拠を総合して認定することが可能である。 2. 未遂罪を既遂罪と同等に処罰する規定がある場合、実行の着手に及んでいれば、最終的な製品の完成(既遂)に至らなくとも犯罪は成立し、可罰性に影響を及ぼさない。
重要事実
被告人は酒税法違反(無免許での焼酎製造等)に問われた。第一審および第二審判決は、複数の証拠に基づき犯罪事実を認定したが、被告人側は「製品の酒精(アルコール分)を証明する鑑定証拠がないため既遂の事案として認定できない」旨、および「被告人の自白のみで認定されており憲法38条に違反する」旨を主張して上告した。なお、当時の酒税法60条2項は未遂罪を既遂罪と同様に罰する規定を置いていた。
あてはめ
1. 証拠の評価について、原判決は第一審が掲げた複数の証拠(証人の供述等)を総合して事実を認定しており、特定の事項について鑑定を経ることは不可欠ではない。 2. 実体法上の解釈として、酒税法(当時)60条2項が未遂も既遂と同様に罰すると定めている点に着目すれば、焼酎を製造する目的でその手段を終了した以上、仮に製品が未完成であっても可罰性は否定されない。 3. 証拠関係を精査すると、被告人の自白以外に複数の証拠(証人Bの供述等)が存在しており、自白のみによる処罰にはあたらない。
結論
上告棄却。酒精度の証明に鑑定は必須ではなく、また未遂処罰規定がある以上、製品の完成を待たずとも犯罪は成立する。
実務上の射程
証拠裁判主義における鑑定の任意性と、未遂処罰規定(既遂と同等に罰する場合)の解釈指針を示すものである。答案上は、構成要件要素の立証手段が限定されないことや、未遂規定の適用による既遂該当性の相対化(可罰性の維持)を論じる際に参照できる。
事件番号: 昭和26(あ)1114 / 裁判年月日: 昭和29年1月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】差押調書に記載された焼酎の容器(瓶、樽、罐)および内容量の具体的な状況から、酒類製造の事実を認定できるとした原判決に違法はない。 第1 事案の概要:被告人が酒類(焼酎)を製造したとして起訴された事案において、第一審判決は差押調書等の証拠を挙げた。当該調書には、四号焼酎瓶1本(満杯)、二斗樽2個(満…