判旨
被告人が密造者本人であると認定された事案において、法令の適用の有無や事実誤認の主張が、原審での主張を経ていない場合や前提事実を欠く場合は、適法な上告理由とはならない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法における上告理由の適格性(刑訴法405条等)および、原審で判断されていない事項や確定した事実と異なる前提に基づく主張が上告理由として認められるか。
規範
上告審において、原審で主張されず判断を経ていない事項は、原則として適法な上告理由とならない。また、主張の前提となる事実が第一審や原審の認定と異なる場合には、その主張は前提を欠くものとして退けられる。
重要事実
被告人が酒税法違反(密造)の罪に問われた事案。弁護人は上告審において、(1)行為時の酒税法の規定が違憲であること、(2)密造者は被告人ではなく内縁の夫であるため事実誤認があること、(3)量刑が不当であることを主張した。しかし、第一審および原審では、密造者は被告人本人であると認定されていた。
あてはめ
まず、憲法違反の主張については、原審で主張・判断されていない事項であるため適法な上告理由にならない。加えて、行為時に当該酒税法が施行されていたことは明らかであり前提を欠く。次に、密造者が内縁の夫であるとの主張については、第一審が被告人本人を密造者と認定している以上、事実誤認を前提とする不当な主張である。量刑不当の主張も、これらの正当な理由がない主張を前提とするものであるため、適法な理由とは認められない。
結論
本件上告には適法な上告理由がないため、棄却される。
実務上の射程
上告審の構造(事後審的性格)を端的に示す判例である。答案上は、原審で尽くされていない新主張の制限や、確定した事実を前提としない主張の排斥を論じる際の根拠として機能する。
事件番号: 昭和27(あ)3742 / 裁判年月日: 昭和28年4月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】原審で主張されず、その判断を経ていない事項についての事実誤認や訴訟法違反の主張は、刑事訴訟法405条の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が上告を申し立てた際、弁護人が上告趣意書において事実誤認および訴訟法違反を主張したが、これらの事項は第一審または控訴審の審理過程で主張されたもので…