判旨
上告審において、原審で主張・判断されていない憲法違反等の事項を新たに主張することは、適法な上告理由とは認められない。また、単なる法令違反や事実誤認、量刑不当の主張は、刑事訴訟法405条所定の上告理由に該当しない。
問題の所在(論点)
上告審において、原審で主張されていなかった憲法違反等の事項を新たに主張することが適法な上告理由となるか。また、事実誤認や量刑不当を理由とする上告が認められるか。
規範
刑事訴訟法405条に基づく上告において、原審で主張されず判断を経ていない事項(憲法違反を含む)を新たに主張することは、特段の事情がない限り適法な上告理由とはならない。また、上告理由は同条各号に掲げる事由(憲法違反、判例違反)に限定されており、単なる法令違反、事実誤認、または量刑不当の主張は、適法な上告事由を構成しない。
重要事実
被告人側は、原審(控訴審)の判断に対し、憲法32条違反、憲法31条違反、憲法29条違反、および憲法14条違反等を理由として上告を申し立てた。しかし、これらの憲法違反の主張は、原審において全く主張されておらず、原判決の判断を経ていない事項であった。加えて、上告趣意書の内容には、実質的に単なる事実誤認や訴訟法違反、あるいは量刑不当を主張する部分が含まれていた。
あてはめ
本件の上告趣意のうち、憲法32条、31条、29条、14条違反の主張は、いずれも原審において主張されておらず、原判決の判断を経ていない事項である。刑事訴訟法上の上告審の構造に照らし、これらは適法な上告理由とは認められない。また、その他の主張内容も、実質的には事実誤認や単なる法令違反、あるいは量刑不当を訴えるものであり、刑事訴訟法405条が規定する限定的な上告理由のいずれにも該当しない。記録を精査しても、同法411条を適用して職権で判決を破棄すべき顕著な事由も認められない。
結論
本件各上告は、適法な上告理由を欠くため、棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟における上告理由の限定性を示す。答案上では、上告理由が憲法違反や判例違反に限定されること(刑訴法405条)、および「憲法違反」を構成するためには原審での主張・判断が必要であることを説明する際の根拠となる。実務上は、原審で尽くさなかった法的論点を上告審で蒸し返すことの困難さを強調する判例である。
事件番号: 昭和27(あ)5199 / 裁判年月日: 昭和28年3月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法405条に定められた上告理由(憲法違反、憲法解釈の誤り、最高裁判例との相反、または判例がない場合の最高裁の判断との相反)に基づかない主張は、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人A、B、CおよびDの弁護人が、原判決の量刑不当および法令違反を理由として上告を申し立てた事案…