判旨
電気は、物理的に管理可能なエネルギーであり、他人の占有を排除して自己の支配下に置くことができるため、窃盗罪の客体である「財物」に含まれる。
問題の所在(論点)
電気のような無体物が、刑法235条の「財物」に該当し、窃盗罪の客体となり得るか。物理的な実体を持たないエネルギーに対して「管理の可能性」を認めることができるかが問題となる。
規範
刑法上の「財物」とは、有体物に限らず、物理的に管理可能なエネルギーを含む。すなわち、他人の占有を排除して排他的に支配・利用できるものであれば、管理の可能性を認めることができ、窃盗罪の客体となる。
重要事実
被告人は、他人が所有・占有する管理下にある電気を、正当な権限がないにもかかわらず不正な手段によって自己の用途に消費した(判決文からは具体的な窃用態様の詳細は不明だが、窃盗の事実が認定されている)。第一審および原審では、本件行為を窃盗罪として有罪としたが、衣料切符譲渡に関する臨時物資需給調整法違反の点についても併せて審理されていた。
あてはめ
電気は、発電・送電施設を通じて特定箇所に供給されており、スイッチの開閉等によってその利用を制御することが可能である。このように、エネルギーが人為的な手段によって「管理」されている以上、それは排他的な支配の対象となり、他人の財産的利益を構成する。したがって、有体物ではない電気であっても、法的に保護されるべき財産的価値を有するものとして、窃盗罪の客体たる「財物」に当たると解される。
結論
被告人の所為は、刑法235条の窃盗罪に該当する。また、併合罪の関係にある他罪について大赦があった場合は、その点につき免訴を言い渡すべきであるが、窃盗罪の成立自体は妨げられない。
実務上の射程
本判決(電気窃盗事件)は、刑法245条が「電気は、財物とみなす」と規定している趣旨をあわせて確認するものであり、エネルギー等の無体物であっても物理的に管理可能であれば財物性を認める「管理可能説」の端緒となった。答案上は、情報の持ち出しなど、現代的な無体物の財物性を検討する際の比較対象(物理的な管理の可否という基準)として言及される。
事件番号: 昭和25(あ)2743 / 裁判年月日: 昭和26年8月9日 / 結論: 棄却
本件の被害品であるリヤカー用タイヤ二本が所論のように無価値な廃品であつて窃盗罪を構成するに足りないほど被害法益が零細であるとは認められないから、原判決は所論に掲げるいわゆる一厘事件の大審院判決に違反するものということはできない。