判旨
電気は、刑法第245条により財物とみなされるため、他人の管理する電気を正当な権限なく自己の用に供する行為は、窃盗罪(刑法235条)を構成する。
問題の所在(論点)
刑法245条の「電気は、財物とみなす」との規定により、電気を不法に領得する行為が窃盗罪(刑法235条)を構成するか。また、過去の判例との整合性において本件行為を窃盗罪と解することに妨げがあるか。
規範
刑法245条は「この章の罪については、電気は、財物とみなす」と規定しており、エネルギー体である電気も窃盗罪(刑法235条)の客体となる。したがって、他人が管理し、排他的な支配が及んでいる電気を、占有者の意思に反して自己又は第三者の占有に移転させる行為は、窃盗罪の構成要件に該当する。
重要事実
被告人が、他人が管理・所有する電気を、正当な権限や契約上の根拠がないにもかかわらず、自己の用途のために無断で使用した。原審はこれを窃盗罪と認定したが、被告人側は「大審院の判例に照らせば本件は窃盗罪に当たらない」として、判例違反を理由に上告した。
あてはめ
刑法245条の明文規定により、電気は窃盗罪の客体である「財物」に含まれる。本件において、被告人が他人の管理下にある電気を無断で使用した行為は、当該電気の占有を排他的に奪い、自己の支配下に移したものと評価できる。弁護人が主張する過去の大審院判決は、特定の状況下で窃盗罪が成立することを示したに過ぎず、本件のような電気の無断使用について窃盗罪の成立を否定する趣旨ではない。したがって、原判決が窃盗罪の成立を認めたことに判例違反の違法は認められない。
結論
被告人の行為は窃盗罪を構成し、本件上告は棄却される。電気を無断で使用する行為は刑法245条および235条に基づき処罰される。
実務上の射程
事件番号: 昭和26(あ)3409 / 裁判年月日: 昭和27年12月2日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】電気は、物理的に管理可能なエネルギーであり、他人の占有を排除して自己の支配下に置くことができるため、窃盗罪の客体である「財物」に含まれる。 第1 事案の概要:被告人は、他人が所有・占有する管理下にある電気を、正当な権限がないにもかかわらず不正な手段によって自己の用途に消費した(判決文からは具体的な…
本判決は、電気窃盗(いわゆる盗電)について、刑法245条の擬制規定を適用し、当然に窃盗罪が成立することを確認したものである。実務上は、電気以外のエネルギー(熱エネルギーやガス等)の財物性や、電気の「管理可能性」が争点となる事案において、本条の趣旨を敷衍して論じる際の基礎となる。答案作成上は、物理的管理が可能なエネルギーについては245条を直接適用または類推適用する論拠として重要である。
事件番号: 昭和25(あ)2743 / 裁判年月日: 昭和26年8月9日 / 結論: 棄却
本件の被害品であるリヤカー用タイヤ二本が所論のように無価値な廃品であつて窃盗罪を構成するに足りないほど被害法益が零細であるとは認められないから、原判決は所論に掲げるいわゆる一厘事件の大審院判決に違反するものということはできない。