原判決は、職権により、第一審判決の心神耗弱の認定を事実誤認として、同判決を破棄すべきものと判断したのであるから、心神耗弱の認定を前提とする控訴趣意については、特に判断を示すまでもない。
控訴審が第一審判決を事実誤認を理由として破棄自判した場合に、破棄の理由となつた心神耗弱の認定を前提とする主張に対し、更に判断しなければならないか
刑訴法392条,刑訴法382条,刑訴規則246条
判旨
控訴審において、職権により第一審判決の心神耗弱の認定を事実誤認として破棄する場合、その心神耗弱を前提とする控訴趣意について別途判断を示す必要はない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法上、控訴審が職権により第一審判決の前提事実(心神耗弱の認定等)を事実誤認として破棄する場合、当該前提事実に基づく控訴趣意について個別の判断を示す必要があるか。
規範
控訴審が職権により第一審判決の事実誤認を認めて破棄を決定する場合、破棄の対象となる事実を前提とした控訴趣意については、実質的に判断の必要性が失われるため、個別に判断を示すことを要しない。
重要事実
第一審判決が被告人を心神耗弱と認定したことに対し、控訴趣意において心神耗弱を前提とする主張がなされた。しかし、原判決(控訴審)は職権により、第一審の心神耗弱の認定自体を事実誤認として破棄すべきものと判断した。上告人は、原判決が控訴趣意に判断を示さなかった点を不服として上告した。
事件番号: 昭和26(あ)2859 / 裁判年月日: 昭和28年2月12日 / 結論: 棄却
原判決は、第一審判決を破棄し自ら量刑処断したものであるから、所論量刑不当の控訴趣意につき判断を省略したのは正当である。
あてはめ
本件では、原判決が職権に基づき、第一審の心神耗弱の認定を事実誤認と判断して第一審判決を破棄している。この場合、心神耗弱の存在を前提とする控訴人の主張は、その前提自体が原判決によって否定されたことになる。したがって、原判決が当該控訴趣意について「特に判断を示すまでもない」として判断を省略したことは、手続上の違法には当たらないと評価される。
結論
第一審の認定を職権で事実誤認として破棄する場合、その認定を前提とする控訴趣意に判断を示す必要はなく、判決に影響を及ぼすべき訴訟手続の違反は存しない。上告棄却。
実務上の射程
刑事訴訟における職権破棄の際の理由付記の程度を示す。弁護人の主張する控訴趣意が、職権で否定された事実を前提とするものである場合、裁判所は排斥の理由を逐一述べる必要がないという実務上の処理を許容するものである。
事件番号: 昭和25(あ)1482 / 裁判年月日: 昭和26年4月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法405条に当たらない事実誤認や証拠標目の誤記等の主張については、記録を精査しても同法411条を適用すべき事由がない限り、適法な上告理由にはならない。 第1 事案の概要:被告人が、第一審判決を維持した原判決に対し、事実誤認があること、および証拠として存在しない「虚無の証拠」を断罪の資料に供…