判旨
控訴審において、第一審判決を破棄自判する際に原審独自の量刑上の考慮がなされている場合には、第一審の量刑不当を理由とする控訴趣意に対し個別に判断を示さなくても、判決に影響を及ぼすべき訴訟手続の法令違反には当たらない。
問題の所在(論点)
控訴審において第一審判決を破棄自判する場合に、被告人側の量刑不当の控訴趣意について個別の判断を示さないことが、判決に影響を及ぼすべき訴訟手続の法令違反(刑訴法378条、405条等)に当たるか。
規範
控訴審において検察官の控訴趣意に基づき第一審判決を破棄自判する場合、裁判所が自ら判決をするにあたって量刑上の事情を十分に考慮しているといえるのであれば、弁護人が主張した量刑不当の控訴趣意に対し個別に判断を示さなかったとしても、適法な量刑判断が行われたものと解される。
重要事実
第一審判決に対し、検察官は被告人の心神耗弱を認めて刑を減軽した点に誤りがあるとして控訴し、弁護人は第一審の量刑が重すぎて不当であるとして控訴した。原判決(控訴審)は、検察官の主張を容れて心神耗弱を否定し第一審判決を破棄自判したが、その際、弁護人の量刑不当の主張に対しては特段の判断を示さなかった。
あてはめ
原審は、心神耗弱による軽減をなすべきでないという検察官の控訴趣意に基づき第一審判決を破棄している。その破棄後の自判の手続において、原審としての量刑上の考慮が実質的になされている。したがって、第一審の量刑が不当であるという弁護人の控訴趣意に対し、形式的に個別の判断を明示しなかったとしても、実質的な判断を欠いたものとはいえず、違法ではない。
結論
被告人側の量刑不当の主張に対し特段の判断を示さなかったとしても、自判に際して量刑上の考慮がなされている以上、適法である。
実務上の射程
事件番号: 昭和31(あ)2595 / 裁判年月日: 昭和31年11月13日 / 結論: 棄却
記録を調査すると、原判決が所論控訴趣意第二点に対する判断を遺脱していることは、所論のとおりであるけれども、右控訴趣意第二点は量刑不当の主張であつて、右第二点において主張するような被告人に有利な情状を斟酌しても、第一審判決の被告人Aに対する量刑は相当であつて、重きにすぎるものとは認められないから、所論のような違法があつて…
破棄自判時の理由付備の程度に関する判例である。控訴趣意に対する「判断」の要否が争点となるが、判決全体として当該事項(量刑等)が実質的に審理・考慮されていれば、個別の回答が欠けていても直ちに違法とはされない。実務上は、自判の理由の中で量刑事情が総合的に評価されているかを確認する指針となる。
事件番号: 昭和35(あ)61 / 裁判年月日: 昭和35年6月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において事実の取調べを行い破棄自判する場合であっても、公訴事実の同一性を害しない限度で訴因の追加を許容すべきであり、不利益変更禁止の原則は判決の主文(刑の結果)のみを対象とする。 第1 事案の概要:第一審判決に対し控訴がなされ、控訴審において事実の取調べが行われた。その過程で検察官から訴因の…