判旨
控訴審において事実の取調べを行い破棄自判する場合であっても、公訴事実の同一性を害しない限度で訴因の追加を許容すべきであり、不利益変更禁止の原則は判決の主文(刑の結果)のみを対象とする。
問題の所在(論点)
1. 控訴審において、公訴事実の同一性を害しない範囲での訴因の予備的追加は許されるか(刑訴法312条1項、400条但書)。 2. 刑訴法402条の「不利益な変更」の対象は、判決の理由を含むか、それとも主文の刑に限られるか。
規範
1. 訴因変更の許容性:控訴審が事実の取調べをなし破棄自判する場合であっても、公訴事実の同一性を害しない限度で、検察官による訴因の予備的追加の請求を許すべきである。 2. 不利益変更禁止(刑訴法402条):同条は、判決主文の刑、すなわち判決の結果を原判決の結果と比較して被告人の不利益に変更することを禁じるものである。 3. 適正手続:訴因変更に際し、被告人・弁護人が異議なく意見を述べる等、防禦に実質的な不利益を与えない場合は適法である。
重要事実
第一審判決に対し控訴がなされ、控訴審において事実の取調べが行われた。その過程で検察官から訴因の予備的追加が請求された。これに対し被告人および弁護人は異議がない旨の意見を述べた。控訴審は第一審判決を事実誤認により破棄し、追加された訴因を含めて自判した。被告人側は、控訴審での訴因追加や量刑の不当を理由に上告した。
あてはめ
1. 訴因変更について:控訴審が自ら事実取調べを行い自判する場合には、公訴事実の同一性がある限り訴因変更を認めるのが相当である。本件では被告人・弁護人が追加に同意しており、防禦に実質的な不利益が生じていないため、手続きは適法である。 2. 不利益変更について:不利益変更禁止の原則は「判決の結果(刑)」を対象とする。第一審の認定事実と異なる事実に基づき自判する場合であっても、結果としての刑が重くならない限り、同条には違反しない。本件の一審判決の事実を基礎とする量刑不当の主張は、破棄自判によりその前提を欠くに至っている。
結論
控訴審における訴因の追加は適法であり、判決の結果としての刑が不当に加重されていない限り、不利益変更禁止の原則には抵触しない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
控訴審における訴因変更の可否、および不利益変更禁止の原則の対象が「主文(刑)」に限られることを論述する際の基礎となる。特に、控訴審で新たな訴因が追加された場合の防禦権の保障や、破棄自判時の量刑判断の枠組みを示す場面で活用できる。
事件番号: 昭和35(あ)265 / 裁判年月日: 昭和35年6月16日 / 結論: 棄却
一 包括一罪として法令を適用したのに対し、右は併合罪であるとして判例違反を主張することは、自己に不利益な主張であつて適法な上告理由にあたらない。 二 被害者の子女を真実一流歌手として世に出しうる社会的地位背景なくその見込もないのに、その旨欺罔して金員を騙取しようと企て、種々術策を弄してその旨誤信させ、因つて右運動費等の…