一 包括一罪として法令を適用したのに対し、右は併合罪であるとして判例違反を主張することは、自己に不利益な主張であつて適法な上告理由にあたらない。 二 被害者の子女を真実一流歌手として世に出しうる社会的地位背景なくその見込もないのに、その旨欺罔して金員を騙取しようと企て、種々術策を弄してその旨誤信させ、因つて右運動費等の名目で昭和三三年九月三〇日被害者の別宅で二万円、同年一〇月六日頃同本宅で一〇万円、同月一〇日頃同所で二万円、同月一三日頃同所で三万五千円、同月二四日頃同所で壱万円の各交付を受けてこれを騙取所為は、包括一罪を構成する。
一 適法な上告理由にあたらない事例 二 包括一罪と認められる事例
刑法45条,刑法246条1項,刑訴法402条,刑訴法405条2号
判旨
被告人に不利益な法令解釈の誤りを主張することは、上告理由として不適法であり、原審が包括一罪として処断した事実関係の下ではその判断は正当である。
問題の所在(論点)
被告人の利益を守るべき立場にある上告審において、被告人にとって不利益となる「罪数の拡大(併合罪への変更)」を求める主張が、適法な上告理由となるか。
規範
上告審において、被告人側が原判決の法令適用について、より重い罪責(併合罪)を負うべきであると主張することは、被告人に不利益な主張であり、上告理由として不適法である。
重要事実
被告人が行った犯行について、第一審および原審は包括一罪として処断した。これに対し、被告人の弁護人は、本件犯行は単純一罪(包括一罪)ではなく、より重い処断刑となる併合罪として構成されるべきであるとして上告を申し立てた。
あてはめ
弁護人の主張は、本件犯行を包括一罪ではなく併合罪として認めるべきとするものである。しかし、これは被告人にとって刑の重くなる不利益な主張である。原審が確定した事実関係に基づき、本件行為を包括一罪として処断したことは、法令の適用として正当といえる。したがって、被告人に不利益な方向への変更を求める主張は、刑訴法405条の定める上告理由には該当しない。
結論
本件上告は不適法であり、棄却される。被告人に不利益な罪数判断の変更を求める主張は上告理由とならない。
実務上の射程
被告人側から「併合罪にすべき」という主張がなされる稀なケースであるが、上告審の構造が被告人の救済にあることを示す。答案上は、罪数判断において包括一罪か併合罪かが争点となる際に、被告人の不利益変更禁止の観点や、裁判所の認定の正当性を支える傍証として参照し得る。
事件番号: 昭和25(あ)962 / 裁判年月日: 昭和26年3月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実誤認や量刑不当の主張は、刑事訴訟法405条に規定された適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人Aおよび被告人Bの弁護人が、第一審判決における事実誤認および量刑不当を理由として上告を申し立てた事案。弁護人側は憲法違反を形式的に主張していたが、実質的には事実関係や刑の重さを争うもの…