判旨
第一審判決に一部の公訴事実について理由を付さない違法がある場合であっても、控訴審が自ら判決(破棄自判)を行うことで、その違法を是正することができる。
問題の所在(論点)
第一審判決に一部の公訴事実について理由不備の違法がある場合に、控訴審が自ら判決(破棄自判)をすることで当該不備を是正することが許されるか。
規範
控訴審は、第一審判決に理由不備等の訴訟手続の法令違反(刑事訴訟法379条)がある場合、第一審判決を破棄しなければならない(同法397条1項)。その上で、訴訟記録及び控訴裁判所において取り調べた証拠により直ちに判決をすることができるものと認めるときは、被告事件について自ら判決(自判)をすることができる(同法400条但書)。
重要事実
被告人は、起訴状別表に記載された多数の事実について起訴された。第一審判決は、そのうちの特定の事実(別表記載の94から100の事実)についても審判の対象としていたが、判決書において当該事実に関する理由を付していなかった(理由不備の違法)。これに対し、原審(控訴審)は、第一審判決には一部理由を付さない違法があるとして、第一審判決を破棄した上で、自ら判決を下して当該違法を是正した。
あてはめ
本件では、第一審判決が別表94乃至100の事実について審判をしながら、その理由を記載しなかったという訴訟手続上の違法が存在する。しかし、原審は刑事訴訟法に基づき、第一審判決の当該違法を理由としてこれを破棄している。さらに、原審において証拠関係等を精査し、自ら判決(自判)を行うことによって、第一審で欠けていた理由を補い、適正な裁判を実現している。したがって、原審の措置に何ら違法はないと解される。
結論
控訴審が第一審の理由不備を破棄自判によって是正することは適法であるため、本件上告を棄却する。
実務上の射程
刑事訴訟法上の破棄自判(400条但書)の機能を示す事例である。答案上は、控訴審の事後審的性格を確認しつつ、第一審の瑕疵が重大であっても、控訴審において審理・判断が可能な範囲であれば、自判による瑕疵の治癒・是正が肯定されることを説明する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和30(あ)4051 / 裁判年月日: 昭和33年2月20日 / 結論: 棄却
一 控訴審が事実の取調をした以上、第一審の無罪判決を破棄して有罪を認定するにあたり、第一審において取り調べた証拠のみを挙示することはなんら違法でない。 二 原判決が全体の趣旨において引用の判例と異る判断をしたものというだけで、そのいかなる部分が引用の判例のいかなる部分と異るのか具体的に明らかでない主張は、上告理由として…