原判決は、第一審判決の量刑不当を主張した弁護人の控訴趣意を理由ありと認めて破棄自判したものであるから、第一審判決が適法な証拠により認定した罪となるべき事実及び前科事実はこれをそのまま引用した上、これに法令の適用をなして刑の量定をしたものと解すべきである(昭和二七年(あ)第六三一六号同二九年四月一三日第三小法廷判決、集八巻四号四六二頁、昭和二四年新(れ)第五三八号同二五年九月七日第一小法廷決定各参照)。そして第一審判決は被告人の前刑の終了の年月日その他前科事実を具体的に判示していることその判文上明白であるから、これを引用していると解すべき原判決には、所論の如く前科事実の具体的摘示がないということはできない。
控訴審が第一審判決の量刑不当を理由として破棄自判する場合と前科事実の摘示。
刑訴法381条,刑訴法397条,刑訴法400条,刑法56条,刑法57条
判旨
控訴審が量刑不当を理由に一審判決を破棄自判する場合、一審が認定した罪となるべき事実及び前科事実をそのまま引用して刑を量定することができる。
問題の所在(論点)
控訴審が量刑不当を理由に破棄自判を行う際、第一審判決が認定した前科事実を引用する形式で足りるか。判決書に前科事実を具体的に再掲する必要があるか。
規範
控訴裁判所が第一審判決の量刑不当を理由に破棄自判する場合、第一審判決が適法な証拠により認定した罪となるべき事実および前科事実をそのまま引用し、これに法令を適用して刑の量定を行うことができる。
重要事実
被告人が刑事事件で起訴され、第一審判決において前刑の終了年月日を含む前科事実が具体的に判示された。控訴審判決は、弁護人の量刑不当の主張を認めて第一審判決を破棄し、自ら判決(破棄自判)を言い渡した。この際、控訴審判決文中に前科事実の具体的な摘示が欠けていたため、被告人側が法令違反等を理由に上告した。
あてはめ
第一審判決において、被告人の前刑終了の年月日その他の前科事実は具体的に判示されている。控訴審は、第一審の量刑が不当であるとしてこれを破棄しているが、事実認定自体を否定したものではない。したがって、控訴審が第一審の認定事実をそのまま引用して刑を量定した以上、判決書に改めて前科事実を具体的に摘示していないとしても、法的な欠陥があるとはいえない。本件の前科と本件所為が累犯関係に立つことは明白であり、法令解釈の誤りも認められない。
結論
控訴審が第一審の事実認定を引用して量刑判断を行うことは適法であり、改めて前科事実を判決書に具体的に記載しなくとも違法ではない。
実務上の射程
量刑不当を理由とする破棄自判(刑訴法397条2項、400条但書)の際の事実摘示の程度に関する実務指針。一審の事実認定を前提とする場合、判決構成を簡略化できる根拠となるが、答案上は累犯加重等の前提となる前科事実が「引用」によって維持されているかを確認する際に用いる。
事件番号: 昭和35(あ)61 / 裁判年月日: 昭和35年6月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において事実の取調べを行い破棄自判する場合であっても、公訴事実の同一性を害しない限度で訴因の追加を許容すべきであり、不利益変更禁止の原則は判決の主文(刑の結果)のみを対象とする。 第1 事案の概要:第一審判決に対し控訴がなされ、控訴審において事実の取調べが行われた。その過程で検察官から訴因の…
事件番号: 昭和27(あ)6316 / 裁判年月日: 昭和29年4月13日 / 結論: 棄却
控訴審が、第一審判決の量刑不当の主張を理由ありとしてこれを破棄自判するにあたつては、第一審判決の確定した事実に対し法令の適用を示せば足り控訴審として改めて事実を認定するを要しない。