論旨指摘の記録一八丁以下を閲するに同丁の書類は昭和二三年五月一六日附牛窓町警察から照會の窃盜被疑事件について同月一八日附岡山管理部業務課公安係から岡山車掌區長Aの提出した被害始末書を牛窓町警察所長に送附する旨の書類の寫であつて所論のように牛窓町警察署からの報告書ではない。又一九丁の書類はAの被害始末書の原本を録取したものである旨の認證のある寫であつて、所論のように警察官の報告書の内容をなくすものでなく、從つて被害始末書の原本と同一の證據能力を有する書類である。されば原審公判調書中の證據調をした書類として記載された各始末書(記録一六四丁)とあるのはこの被害始末書の寫をも含む趣旨と解すべきは當然である。それ故、原審が右被害始末書寫を證據としたからといつて、證據調を經ていない證據を斷罪の資に供したとはいえない。
認證のある被害始末書寫の證據能力
舊刑訴法336條
判旨
窃盗犯人が窃取の目的で貨車から蹴り落とし、隠匿した物品は、当該窃盗犯人の占有下にある。したがって、他人がこれを更に窃取する行為は、占有離脱物横領罪ではなく窃盗罪を構成する。
問題の所在(論点)
先行する窃盗犯人が貨車から蹴り落として隠匿した物品について、当該窃盗犯人の占有が認められるか。また、それを領得する行為は窃盗罪(刑法235条)と占有離脱物横領罪(刑法252条)のいずれに該当するか。
規範
刑法235条の「窃取」にあたるかは、目的物の占有が誰に帰属しているかにより判断される。窃盗犯人が目的物を自己の支配下に置く意図で移動させ、特定の場所に隠匿した場合、その物品には先行する窃盗犯人の占有が認められる。この占有を侵害して自己の支配下に移す行為は窃盗罪を構成し、占有を離れた物を領得する占有離脱物横領罪(252条)にはあたらない。
重要事実
被告人らは、荷主の所有に係る物品が積載された貨車から、先行する窃盗犯人が窃取の目的で蹴り落とし、特定の場所に隠匿していた物品をさらに窃取した。弁護人は、当該物品は先行の窃盗犯人の占有を離れた「占有離脱物」であり、被告人らの行為は占有離脱物横領罪にとどまると主張して上告した。
あてはめ
判旨によれば、先行する窃盗犯人は貨車から物品を蹴り落とし、これを隠匿していた。この事実は、先行者が物品を物理的に移動させ、自己の排他的な支配を及ぼそうとしていたことを示す。したがって、当該物品は先行の窃盗犯人の占有に属するといえる。被告人らがこの物品をさらに取得した行為は、先行者の占有を排除して自己の占有を樹立するものであり、占有者の意思に反する占有移転として「窃取」に該当する。占有が継続している以上、占有離脱物とは認められない。
結論
被告人らの行為には刑法235条が適用され、窃盗罪が成立する。占有離脱物横領罪が成立するとの弁護人の主張は採用されない。
実務上の射程
「二重の窃盗」事案において、先行者の占有を肯定した判断。実務上、先行者が不法に取得した物であっても、それが先行者の事実上の支配下にある限り、さらにそれを奪う行為は窃盗罪となることを示す。答案では、被害品が「占有を離れたか否か」の判断において、先行者の隠匿行為等の事実関係から支配の継続性を論証する際に引用すべきである。
事件番号: 昭和25(あ)741 / 裁判年月日: 昭和26年3月20日 / 結論: 棄却
原判決の維持する第一審判決は、その判示事実と判決挙示の証拠とを対照して考えると、被告人等および第一審相被上告人Aは小運送業を営み、B通運株式会社C支店の常傭として、同会社C支店長Dの保管に係る水粳玄米を同支店倉庫から食糧配給公団E支所精米所へ運搬する労務に従事中、判示のようにその運搬途上においてこれを、窃取したとの事実…