他人からその所有の衣類在中の繩掛け梱包した行李を預かり保管中質種に供する目的で梱包を解き行李から衣類を取り出したときは、衣類の窃盗罪を構成する。
窃盗罪を構成する一事例
刑法235条,刑法252条1項
判旨
封印や梱包がなされた他人の財物を保管している者が、領得の意思をもってその封を解き、中身を取り出す行為は、中身に対する所持が依然として所有者に帰属しているため、窃盗罪を構成する。
問題の所在(論点)
他人の財物が入った封印・梱包済みの容器を保管する者が、その梱包を解いて中身を取り出した場合、客体に対する占有は誰に帰属し、いかなる罪責を負うか(窃盗罪か横領罪か)。
規範
封印具(本件では縄掛け梱包された行李)の中身については、外容器を預けた段階では、受託者に容器自体の占有は認められるものの、中身については依然として委託者が所持(占有)を保持していると解される。したがって、受託者が恣意的に容器を開封して中身を取り出した場合、委託者の占有を侵害したことになり、窃盗罪(刑法235条)が成立する。
重要事実
被告人は、他人から衣類が在中の縄掛け梱包された行李1個を預かり保管していた。被告人は、他人から借金をする際の質草にする目的で、独断で梱包を解き、当該行李の中から衣類を取り出した。
あてはめ
本件において、被告人は衣類が入った「縄掛け梱包された行李」の保管を委託されていたに過ぎず、行李自体は占有していても、その中身である衣類については、梱包が維持されている限り所有者(委託者)が所持を失っていないと評価される。被告人が借金の質種にするという不法領得の意思に基づき、独断で梱包を解き衣類を取り出した行為は、所有者の意思に反して衣類の占有を自己に移転させる行為にあたる。
結論
被告人の行為は、衣類に対する窃盗罪を構成し、業務上横領罪や単純横領罪は成立しない。
実務上の射程
封印のある容器(いわゆる封印具)の占有帰属に関するリーディングケースである。答案上は、容器全体の占有と中身の占有を区別し、封印を破る行為が「占有の移転」を伴う奪取行為に該当することを論証する際に用いる。また、死者の占有や上下主従関係における占有など、占有の所在が問題となる典型場面の一つとして記憶すべき判例である。
事件番号: 昭和31(あ)3129 / 裁判年月日: 昭和32年1月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】窃盗罪における既遂時期は、目的物を自己の実力的支配下に移した時点(取得)であり、共犯者が重量のあるケーブル線を持ち上げて運搬を開始し、一定の距離を移動させた場合には既遂が成立する。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者A・Bと共謀し、炭鉱内に置かれていた鎧装ケーブル線約16メートルを窃取しようとした…