原判決が判示事實の認定資料として證人A、同Bの原審公判廷における各證言を援用していること並びに原審第八回公判調書の記載によれば右兩證人の訊問終了後引續き證人C、同Dを訊問した後一括して被告人等に對し證人等から訊問することがあるか又證言に意見があるかを問うたことは所論のとおりである。しかし、右公判調書によれば右各證人の訊問はいずれも被告人等の面前で行われたものであること明白であり、そして、刑訴應急措置法第一一條によれば、被告人は、公判期日において裁判長に告げ證人を訊問することができるものであるところ、原裁判所は、右各證人に對する被告人等の訊問を阻止した形跡が認められないばかりでなく、右證人兩名に對しては原審の辯護人において取調の都度訊問を爲し、更に裁判長は最後に被告人等に對し右證人に訊問することの有無並びにその證言に對する意見辯解の有無を問うたものであること記録上明らかであるから、各個の證言につき取調を終つた都度被告人等の意見を問わなかつたとしても被告人等の防禦權に何等影響するところないものといわなければならない。
裁判長が數證人の證言について一括して被告人の意見辯解の有無を問うた證據手續
舊刑訴法347條1項,刑訴應急措置法11條
判旨
公判期日において、複数の証人訊問が終了した後に一括して被告人に訊問や意見の機会を与えたとしても、証人の面前での訊問機会が実質的に保障されており、弁護人による取調後の訊問も行われているのであれば、被告人の防御権を侵害する違法はない。
問題の所在(論点)
証人訊問において、各個の証言が終わる都度ではなく、複数の証人訊問終了後に一括して被告人に意見・訊問の機会を与える運用は、被告人の防御権(刑事訴訟法上の証人訊問権等)を侵害し、公判手続の違法を構成するか。
規範
公判手続における証人訊問において、個別の証言が終わる都度ではなく、複数の証人の取調後に一括して被告人に訊問や意見陳述の機会を与えたとしても、手続の全過程を通じて被告人の防御権が実質的に保障されている(訊問を阻止されず、機会が与えられている)のであれば、訴訟手続の法令違反には当たらない。
重要事実
被告人らの公判において、原審は証人A、B、C、Dの4名を訊問した。裁判所は、各証人の訊問が個別に終了した直後ではなく、4名全員の訊問を終了した後に一括して被告人らに対し、証人らへの訊問の有無や証言に対する意見があるかを問いかけた。これに対し弁護人は、個別の証言ごとに意見を問わなかったことは違法であるとして上告した。
あてはめ
本件では、各証人の訊問はいずれも被告人の面前で行われており、被告人が直接証言内容を把握できる状況にあった。また、当時の法制(刑訴応急措置法)下においても、被告人は裁判長に告げて証人を訊問する権利を有していたが、裁判所がこれを阻止した形跡はない。さらに、各証人に対しては弁護人が取調の都度訊問を行っており、最終的には裁判長が被告人自身に対しても訊問・意見陳述の機会を認めている。これらの事実を総合すれば、各証言の直後に都度意見を問わなかったとしても、被告人の防御権に何ら実質的な影響を及ぼしたとはいえない。
結論
個別の証言終了後直ちに被告人の意見を聴かなくても、手続全体で訊問・意見の機会が保障されている限り、被告人の防御権を侵害するものではなく、適法である。
実務上の射程
刑事訴訟法311条3項(被告人の供述拒否権告知・陳述機会)や同法157条以下の証人訊問手続における裁判所の訴訟指揮権の限界を示す。実務上、効率的な審理のために複数の証拠調べ後にまとめて意見を聴く運用がなされる際、それが防御権の本質を害しない範囲であれば許容されるという根拠として機能する。
事件番号: 昭和26(あ)1804 / 裁判年月日: 昭和26年10月12日 / 結論: 棄却
第一審第一回公判において、出席の検察官より被告人の検察事務官に対する第一、二回供述調書の証拠調べ請求があつたのに対し、被告人側がこれを証拠とすることに同意せず、その証拠調べについて異議を申立てた結果、裁判所より右証拠調べの請求が却下せられたにもかかわらず、次の第二回公判において検察官が右供述調書の一部を被告人に読聞かし…