判旨
強盗罪における「暴行または脅迫」は、社会通念上一般に被害者の反抗を抑圧するに足りる程度のものであることを要し、その判断は諸般の事情を総合して決定される。また、供述者を尋問する機会が一度でも保障されていれば、伝聞証拠の証拠能力を認める手続的保障として十分である。
問題の所在(論点)
1.強盗罪における「暴行または脅迫」の程度の判断枠組みはいかなるものか。 2.第一審で尋問の機会が与えられていた場合、第二審において重ねてその機会を与えることなく供述録取書を証拠とすることは許されるか。
規範
刑法上の強盗罪における暴行・脅迫は、社会通念上、一般に被害者の反抗を抑圧するに足りる程度の強さであることを要する。その判断にあたっては、行為の具体的状況や諸般の事情を総合的に考慮し、客観的に決すべきである。
重要事実
被告人らは、共犯関係にある他の被告人と共に強盗等の罪に問われた。第一審において、共犯者らに対する検察官面前調書が証拠請求された際、裁判官は被告人らに対し、供述者を公判廷で尋問できる旨や有利な証拠を提出できる旨を告知した。これに対し被告人らは「ありません」と答えて尋問の機会を放棄した。その後、控訴審(原審)において改めて共犯者らの証人尋問を申請したが却下され、検察官面前調書が証拠として採用されたため、被告人側が憲法上の証人審問権の侵害等を理由に上告した。
あてはめ
本件における暴行・脅迫の内容を原判決が認定した諸般の事情に照らせば、それは社会通念上、一般に被害者の反抗を抑圧するに足りる程度のものであると認められる。また、証拠能力の点については、第一審の公判調書によれば、裁判所は被告人に対し、供述者を公判廷で尋問できる旨を明示的に告知し、その機会を付与している。被告人自らがこれを不要と答えた以上、尋問の機会は実質的に保障されたといえる。したがって、第二審において重ねて尋問の機会を与える必要はなく、当該聴取書を証拠に採用した手続に違法はない。
結論
強盗罪の暴行・脅迫の程度に関する判断は妥当であり、また第一審で尋問機会が保障されていた以上、伝聞証拠の採用手続も適法である。上告棄却。
事件番号: 昭和24(れ)1324 / 裁判年月日: 昭和24年11月10日 / 結論: 棄却
一 數名の強盜犯人が、事前に明示的に強盜することを謀議していた場合ばかりでなく、豫め暗默のうちに強盜をすることを互ひに了解していた場合であつても、又できることなら窃盜だけに止め、止むを得ないときは強盜をする旨打合せていた場合であつてもなお共謀の上強盜をなしたものといい得るのである。 二 舊刑訴法の下では檢察官が公訴を提…
実務上の射程
強盗罪の実行行為に関する「反抗抑圧程度」の定義を示す古典的判例である。あてはめでは、凶器の有無、執拗さ、場所、時間帯などの具体的事実を「社会通念」に照らして評価する。伝聞例外については、現在の刑訴法321条以下の解釈においても、反対尋問権の保障の程度を論じる際の基礎となる考え方を示している。
事件番号: 昭和22(れ)41 / 裁判年月日: 昭和22年11月24日 / 結論: 棄却
一 深夜數人兇器を携えて屋内に侵入して判示のような脅迫行爲をしたときは、通常被害者において反抗を抑壓せられる程度の畏怖を感ずることは明瞭であるから、原判決がその行爲を(恐喝ではなく)強盜と認定して之に對し強盜の法條を適用したのは正當であつて何等の違法はない。 二 所論の被害物件が隠退蔵物資なりやは被告人の本件犯行(強盜…
事件番号: 昭和23(れ)795 / 裁判年月日: 昭和23年11月18日 / 結論: 棄却
一 少年法第七一條第一項の趣旨は、裁判所が審理した結果被告人等に對して所論のごとく保護處分をなすのを相當と認めた場合には少年審判所に事件を送致しなければならぬのであるが、被告人等に對して保護處分をするのが相當であるか否かは、事實審たる原裁判所が諸般の具體的事情を考慮して定むべきものであつてその裁量權にのみ屬するところで…