一 深夜數人兇器を携えて屋内に侵入して判示のような脅迫行爲をしたときは、通常被害者において反抗を抑壓せられる程度の畏怖を感ずることは明瞭であるから、原判決がその行爲を(恐喝ではなく)強盜と認定して之に對し強盜の法條を適用したのは正當であつて何等の違法はない。 二 所論の被害物件が隠退蔵物資なりやは被告人の本件犯行(強盜)の動機目的に存する主観に過ぎないものであるから、これを證據に依り客観的に確定するの必要はない。
一 強盜罪に於ける脅迫行爲 二 犯行動機認定の證據
刑法236條,刑法249條,刑訴法336條,刑訴法360條1項
判旨
強盗罪における脅迫は、深夜に凶器を携えて侵入し、投擲や殺傷の気勢を示すなど、客観的に被害者の反抗を抑圧するに足りる程度のものであれば、強盗罪として処断される。また、奪取対象が隠匿物資であるか否かは犯行の動機にすぎず、犯罪の成否に影響しない。
問題の所在(論点)
深夜に多人数で凶器を携えて侵入し、脅迫を行った行為が、恐喝罪にとどまるのか、それとも強盗罪の「反抗を抑圧するに足りる脅迫」に該当するのか。また、対象物件が軍の隠匿物資であるか否かを客観的に確定させる必要があるか。
規範
強盗罪(刑法236条1項)における「脅迫」とは、相手方の反抗を抑圧するに足りる程度のものをいう。その判断にあたっては、犯行の時刻、場所、人数、凶器の有無及びその種類、態様等の客観的状況を総合して決すべきである。また、不法領得の意思の対象となる物が「隠退蔵物資」である等の主観的な動機や目的は、財物奪取の事実が認められる以上、犯罪の成否を左右しない。
重要事実
被告人ら7名は共謀の上、深夜午前1時半頃、日本刀、手榴弾、登山用ナイフ、バール等を携えてトラックで被害者方に到着した。そのうち被告人らを含む数名が屋内に侵入し、家人10名に対し日本刀を突きつけたり、手榴弾を投げつけるような気勢を示して「騒ぐと危ないぞ」などと脅迫した。家人が畏怖して抵抗できない状態にある中で、被告人らは倉庫を開けさせ、中にある牛肉の缶詰71梱をトラックに積み込んで持ち去った。
あてはめ
本件では、(1)深夜という被害者の心理的抵抗が弱まる時間帯に、(2)数名で日本刀や手榴弾といった殺傷能力の高い凶器を携えて侵入しており、(3)実際にそれらを突きつけるなどして生命への危険を具体的に示している。このような態様は、通常であれば被害者において反抗を抑圧される程度の畏怖を感じるものと認められる。したがって、被告人らの行為は「反抗を抑圧するに足りる脅迫」に該当し、強盗罪が成立する。なお、被害物件が隠匿物資であるか否かは、被告人らの犯行の動機や目的に関する主観的な事情にすぎず、強盗罪の構成要件該当性に影響を与えるものではない。
結論
被告人らの行為は強盗罪を構成し、被害物件の性質を客観的に確定する必要もないため、原判決の法令適用は正当である。
実務上の射程
強盗罪の成否における「反抗抑圧」の判断基準を、客観的な状況(深夜、多人数、凶器)から導く実務の標準的な手法を示している。また、不法領得の意思における「物欲」の純粋性を問わず、自称・正義の動機であっても強盗罪を認める点において、答案上のあてはめの参考となる。
事件番号: 昭和23(れ)795 / 裁判年月日: 昭和23年11月18日 / 結論: 棄却
一 少年法第七一條第一項の趣旨は、裁判所が審理した結果被告人等に對して所論のごとく保護處分をなすのを相當と認めた場合には少年審判所に事件を送致しなければならぬのであるが、被告人等に對して保護處分をするのが相當であるか否かは、事實審たる原裁判所が諸般の具體的事情を考慮して定むべきものであつてその裁量權にのみ屬するところで…
事件番号: 昭和23(れ)913 / 裁判年月日: 昭和23年12月16日 / 結論: 棄却
被告人等を少年法による保護處分その他實刑を科せざる處分を受けしめるのが相當であるか否か等はすべて事實審たる原裁判所の裁量權にのみ屬するところである。