一 裁判長は、被告人が刑訴應急措置法第一一條第二項の規定による訊問權を有することを被告人に告知してその發問を促す義務はない。 二 共同被告人が被告人と同一公判に在廷して、被告人に共同被告人を訊問する機曾が與えられている以上、司法警察官がその共同被告人の供述を録取した書類を判決の證據としても、刑訴應急措置法第一二條第一項本文に反しない。
一 刑訴應急措置法第一一條第二項の規定による被告人の訊問權と裁判長による告知の要否 二 共同被告人の供述を録取した書類と刑訴應急措置法第一二條第一項
刑訴應急措置法11條2項,刑訴應急措置法12條1項
判旨
被告人に共同被告人への訊問権(憲法37条2項、旧応急措置法11条2項)が保障されている場合でも、裁判長に自ら訊問の機会を付与すべき積極的義務はなく、共同被告人が公判期日に在廷していれば、特段の措置を講じずとも伝聞証拠の証拠能力(同法12条1項)は否定されない。
問題の所在(論点)
1. 裁判長が被告人に対し、共同被告人を直接訊問できる旨を告知し、積極的にその機会を与えるべき義務があるか。 2. 共同被告人が公判期日に在廷している場合、特段の訊問手続が執られなくとも、当該共同被告人の供述録取書について「被告人に訊問の機会を与えた」といえるか(伝聞例外の要件充足性)。
規範
被告人が共同被告人を直接訊問できる権利(日本国憲法の施行に伴う刑事訴訟法の応急的措置に関する法律11条2項)がある場合でも、裁判長は被告人に対し積極的に訊問を促す義務を負わない。また、共同被告人が公判期日に在廷しており、被告人が裁判長に告げて訊問することが可能な状況にあれば、伝聞証拠の証拠能力を認める要件である「訊問の機会」(同法12条1項)は常に与えられていると解される。
重要事実
被告人AおよびBは共謀の事案で共同被告人として起訴された。原審の公判期日において、両被告人は終始共に在廷していたが、裁判長から被告人らに対し、互いに相手方を訊問できる旨を告知したり発問を促したりすることはなかった。原審は、被告人Bの司法警察官に対する供述録取書(聴取書)を、被告人Aの犯罪事実を認定する証拠として採用し、有罪判決を下した。
事件番号: 昭和22(れ)208 / 裁判年月日: 昭和23年2月9日 / 結論: 破棄差戻
一 刑訴應急措置法第一二條の規定中「證人その他者(被告人を除く)」とある被告人というのは供述者又は作成者たる當該被告人及び同一審級の同一公判廷における共同被告人を指稱する。 二 違法な證據を他の證據と不可分的に綜合して事實を認定した場合、その違法は判決に影響を及ぼさないものとはいえない。
あてはめ
1. 応急措置法11条2項は被告人に独立の訊問権を認めたものであるが、その行使は裁判長の訴訟指揮に従うべきであり、被告人が自ら裁判長に告げて行う性質のものである。裁判長に発問を促す義務までは課されていない。 2. 本件では、AとBは公判期日を通じて相共に在廷していた。この状況下では、Aは裁判長に告げればいつでもBを直接訊問し得たのであるから、法12条1項の「機会」は常に確保されていたといえる。裁判長が訊問権の行使を制限・抑制した形跡がない以上、手続に違法はない。
結論
裁判長に訊問を促す義務はなく、共同被告人が在廷している限り訊問の機会は確保されているため、原審の証拠採用手続に違法はない。上告棄却。
実務上の射程
憲法37条2項(反対尋問権)と伝聞法則の関係を論じる際の基礎となる。共同被告人が証人としてではなく被告人として公判廷にいる場合でも、物理的に在廷し訊問可能な状態にあれば「機会の付与」があったとみなす実務の原型を示している。現代の刑事訴訟法下においても、共同被告人の供述を証拠とする際の手続的保障の程度を検討する上で重要な射程を有する。
事件番号: 昭和25(れ)80 / 裁判年月日: 昭和25年4月13日 / 結論: 棄却
原判決が判示事實の認定資料として證人A、同Bの原審公判廷における各證言を援用していること並びに原審第八回公判調書の記載によれば右兩證人の訊問終了後引續き證人C、同Dを訊問した後一括して被告人等に對し證人等から訊問することがあるか又證言に意見があるかを問うたことは所論のとおりである。しかし、右公判調書によれば右各證人の訊…
事件番号: 昭和24(れ)2673 / 裁判年月日: 昭和25年3月2日 / 結論: 棄却
一 公判において檢察官のする被告事件の要旨の陳述は、豫審終結決定書が豫審請求書と内容が同一である限り、たとえ右決定が無効のものであつても、その決定書に基いてされても差支ない。 二 昭和二二年五月三日の前に豫審が終結しても、その決定書の送達が同日前になされなかつたときは、豫審終結決定は効力を生せず、同日以後は豫審の請求に…