判旨
刑事訴訟法上、裁判所が弁護人に対し証人の取調べを終えるごとにその証言についての意見・弁解の機会を与えることは法律上要請されておらず、これを行わなかったとしても弁護権行使の機会を不当に制限した違法とはいえない。
問題の所在(論点)
証人取調べの終了直後に、裁判所が弁護人に対して意見弁解の機会を与えないことが、被告人の弁護権(防御権)行使の機会を奪う違法な手続に当たるか。
規範
刑事手続において弁護権行使の機会が十分に与えられているかは、法律が定める手続規定の有無およびその趣旨に照らして判断される。特定の証拠調べ(証人尋問等)が終了するたびに逐一、意見・弁解の有無を問い、その機会を与えるべき旨を定めた明文の規定が存在しない以上、裁判所がかかる機会を個別に提供しないことは直ちに違法とはならない。
重要事実
被告人の公判期日において、出頭した弁護人に対し、証人尋問等の取調べを終えたごとに、その証言内容に関する意見や弁解を述べる機会が与えられなかった。弁護人は、これが弁護権行使の十分な機会を与えない違法な手続であるとして上告した。
あてはめ
旧刑事訴訟法(および現行法も同様)の規定上、証人の取調べが終了するごとに逐次、弁護人に対して意見や弁解の有無を確認すべき義務は裁判所に課されていない。本件においても、公判期日に弁護人が現に出頭しており、法廷における全体的な防御の機会が保障されている。特定の時点での意見聴取を省略したとしても、法律が要求しない手続を行わなかったに過ぎず、弁護権行使の機会を剥奪したとは評価できない。
結論
証人取調べ後の意見弁解の機会付与は法的義務ではなく、これを行わなかったとしても弁護権行使の機会を侵害した違法はない。
実務上の射程
刑事訴訟における証拠調べの実施過程において、裁判所の訴訟指揮としてどの程度の頻度で意見陳述の機会を与えるべきかという実務上の限界を示すものである。弁護人の防御権が抽象的に保障されているとしても、個別の証拠調べごとの意見聴取までが手続的権利として具体化されているわけではないことを確認する際に有用である。
事件番号: 昭和25(れ)1365 / 裁判年月日: 昭和25年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が特定の被告人のために申請された証人を取り調べる際、当該被告人の弁護人に反対尋問の機会を与えていれば、証言内容に関係のない他の被告人の弁護人に尋問の機会を与えなかったとしても憲法37条には違反しない。また、証拠調べ後の意見陳述の機会を被告人のみに与え、弁護人に与えなかったとしても適法である。…