裁判所がその定めた日時場所において證人を尋問する旨の決定謄本が辯護人に適法に送達されている以上、たとえ受命判事をして同證人の尋問をなさしめることに變更した決定謄本が送達されていなくても、かかる理由で上告することは出來ない。
受命判事をして證據調をなさしめることに變更した決定謄本の不送達を理由とする上告の適否
舊刑訴法50條,舊刑訴法212條,舊刑訴法344條2項
判旨
証人尋問の実施方法を裁判所から受命判事に変更した決定が弁護人に送達されていなかったとしても、尋問実施自体の決定が送達されている等、手続上の違法が判決に影響を及ぼさない場合には、上告理由とはならない。
問題の所在(論点)
証人尋問を受命判事に行わせる旨の変更決定が弁護人に送達されなかった手続上の不備が、上告理由(判決に影響を及ぼすべき法令の違反)に該当するか。
規範
刑事訴訟手続において、証人尋問の実施主体を変更する決定の送達に不備があったとしても、当該不備が被告人の防御権行使に実質的な支障を来さず、判決に影響を及ぼさないことが明らかな場合には、上告理由としての違法は認められない。
重要事実
第一審または控訴審において、刑務所に服役中の証人Aを尋問する旨の決定は被告人の弁護人に送達されていた。しかし、その後、裁判所が受命判事に当該尋問を行わせるよう変更した決定については、弁護人への送達がなされていなかった。被告人側は、この手続上の不備を理由として上告した。
事件番号: 昭和27(あ)3571 / 裁判年月日: 昭和29年2月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留手続に不法があるとしても、それのみでは判決に対する上訴理由とはならず、また原審が勾留手続につき職権調査を行わなかったとしても違法とはいえない。 第1 事案の概要:被告人は窃盗被疑事件で勾留され、その後の窃盗被告事件等の発生に伴い勾留が更新された。被告人側は、原審(控訴審)が勾留手続に関する重大…
あてはめ
本件では、証人尋問を実施すること自体を定めた当初の決定は、適法に弁護人へ送達されている。変更されたのはあくまで尋問を担当する主体(裁判所から受命判事への変更)という実施方法の細部に留まる。記録上、被告人の近親者に精神病者がいるなどの特段の事情もなく、犯行当時の精神障害を疑うべき形跡も存在しない。このような状況下では、変更決定の送達漏れがあったとしても、被告人の防御権が不当に侵害されたとはいえず、判決の結果を左右するような重大な違法があったとは解されない。
結論
本件の手続上の違法は原判決に影響を及ぼさないことが明らかであるため、適法な上告理由とはならない。上告棄却。
実務上の射程
刑事訴訟法における「判決に影響を及ぼすべき法令の違反」の判断において、形式的な手続違反があっても、実質的な防御権の侵害や事実認定への影響がない場合には、訴訟手続の無効を認めない実務的な姿勢を示すものとして活用できる。
事件番号: 昭和25(れ)1522 / 裁判年月日: 昭和25年12月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法上、裁判所が弁護人に対し証人の取調べを終えるごとにその証言についての意見・弁解の機会を与えることは法律上要請されておらず、これを行わなかったとしても弁護権行使の機会を不当に制限した違法とはいえない。 第1 事案の概要:被告人の公判期日において、出頭した弁護人に対し、証人尋問等の取調べを終…