原判決が、判示事實を認定するに當り、原審における證人A、同Bの各訊問調書をそれぞれ證據として採用していること、右各證人は、昭和二三年四月二一日原審が現状檢證した際に訊問し、その訊問には被告人が立會つていないことは、所論のとおりである。ついで、八月二六日の公判期日において、右各證人訊問調書につき適法な證據調をした際にも被告人又は辯護人から、前記證人訊問の請求はなされた事跡がない。されば、右證人訊問調書を證據にとつたことは違法であるということはできない。(昭和二三年(れ第二九四號、同七月二九日大法廷判決参照)
檢證現場における證人訊問の調書につき被告人の證人訊問の請求がない場合と該調書の證據力
憲法37條2項,舊刑訴應急措置法12條1項
判旨
被告人が立ち会っていない現状検証時に行われた証人尋問の結果を記載した調書であっても、その後の公判期日において適法な証拠調べ手続を経て、かつ被告人側から特段の異議や証人尋問の請求がなされない場合には、これを証拠として採用することは適法である。
問題の所在(論点)
被告人が立ち会っていない場所で行われた証人尋問の調書を、後の公判期日での証拠調べを経て証拠として採用することが、適正な手続の観点から許されるか(被告人の立会権および証拠調べ手続の適法性)。
規範
被告人が立ち会う機会のないまま行われた証人尋問であっても、その尋問結果を記載した調書について、後の公判期日において内容を確認し反論・防御の機会を与える等の適法な証拠調べ手続が履践され、被告人・弁護人が異議を述べず、改めての尋問請求等も行わなかった場合には、裁判所が当該調書を証拠として採用することは許容される。
重要事実
原審において裁判所が現状検証を行った際、被告人が立ち会っていない状態で証人A及びBの尋問を実施した。その後、第2回公判期日において当該証人尋問調書の証拠調べが適法に行われたが、その際、被告人及び弁護人は当該証人らの尋問を改めて請求する等の措置を講じなかった。原判決はこれらの調書を事実認定の証拠として採用したため、被告人側が手続の違法を主張して上告した。
あてはめ
本件では、現状検証時の証人尋問に被告人は立ち会っていないものの、その後の公判期日(昭和23年8月26日)において当該証人尋問調書につき適法な証拠調べが行われている。この際、被告人または弁護人から改めて当該証人の尋問を求める請求がなされた形跡はなく、防御の機会が放棄または適切に処理されたといえる。また、更新手続等を含むその他の訴訟手続も旧刑事訴訟法の規定に従い適法に履践されている。したがって、当該調書を証拠として採用したことに手続上の違法は認められない。
結論
被告人が立ち会っていない尋問の調書であっても、その後の公判で適法に証拠調べがなされ、尋問請求等の異議がなければ証拠として採用でき、原判決に違法はない。
実務上の射程
伝聞例外や立会権の侵害が問題となる場面での示唆となる。現代の刑事訴訟法下においても、反対尋問権の放棄や同意、適法な証拠調べ手続による瑕疵の治癒という文脈で、証拠能力の判断枠組みとして参照し得る。
事件番号: 昭和28(あ)2240 / 裁判年月日: 昭和28年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が不在の場で行われた公判期日外の証人尋問であっても、弁護人が立ち会い反対尋問の機会が確保され、かつ後の公判期日で被告人に反対尋問の機会が与えられたのであれば、証拠調手続に違法はない。 第1 事案の概要:被告人が東京拘置所に拘禁中、千葉刑務所に収容されていた証人A及びBに対し、受命裁判官等によ…