一 舊刑訴法の事件において公判廷外でする被告人、辯護人からの證人、鑑定人等の取調の請求は舊刑訴法上は同法第三二四條第三項に基き裁判所に對し同條第一項に規定する證據物若しくは證據書類の提出命令證人、鑑定人等に對する召喚状發布等の處分を請求することに歸するものと解すべきである。 二 被告人、辯護人から舊刑訴法第三二四條第一項の規定による處分の請求があつた場合裁判所が右請求を却下するときは決定をしなければならないことは同法第三二四條第四項の規定するところであるから、若し裁判所が右規定に違反し、右請求を容れないにも拘らずこれを却下する決定をしなかつたときは違法ではあるけれども、その違法は同法第四一〇條に規定する絶對上告理由となるものとはいえない。何となれば舊刑訴法第四一〇條第一四號にいわゆる「公判ニ於テ爲シタル證據調ノ請求」とは公判における同法第三四四條の場合を規定したもので公判外における同法第三二四條の場合を規定したものでないこと明文上明であるからである。 三 所論證人申請書を見ると、辯護人がその申出た證人により立證しようとするところは何れも、被告人の人となり、性格、素行、習癖等であると書いてある。しかるに本件については原審裁判所は職權により、若しくは辯護人の申請によつて二〇人餘の證人を尋問し、又被告人の精神鑑定をも命じているのであり、これ等證人の取調鑑定の結果によつて、所論證人申請により立證しようとする事項は十分に取調べられているのであるから、原裁判所が、法廷外で所論各證人の喚問の請求に對し何等決定をしなかつた違法は、本件では原判決に影響を及ぼさないこと明らかである。 四 囑託による委託判事の證人尋問期日を辯護人に通知しなかつたことが違法であるとしても判決において右證人尋問調書を證據にしていないときは、右違法は右判決に對する上告理由とならない。
一 舊刑訴法による事件において公判廷外における被告人、辯護人からの證人、鑑定人等の取調の請求の性質 二 公判期日前被告人又は辯護人からなされた證據調の請求却下の決定をしない場合と上告理由 三 辯護人からの證人喚問請求の趣旨が公判廷において立證され十分取調べをしている場合に法廷外における右請求につき決定をしなかつたことの違法 四 囑託による委託判事の證人尋問期日を辯護人に通知しなかつたことと上告理由
旧刑訴法324条1項,旧刑訴法324条3項,旧刑訴法324条4項,旧刑訴法410条14号,旧刑訴法344条,旧刑訴法324条,旧刑訴法411条
判旨
公判廷外でなされた証拠調請求に対し却下の決定をしないまま結審することは、相対的上告理由たる違法にはなり得るが、直ちに絶対的上告理由となるものではない。また、当該請求に係る事項が他の証拠によって十分に解明されている場合には、判決に影響を及ぼさないものとして破棄事由には当たらない。
問題の所在(論点)
公判期日外において書面でなされた証人尋問の請求に対し、裁判所が採否の決定を行わずに結審した場合の違法の性質、およびそれが判決の破棄事由(絶対的上告理由)に該当するか。
事件番号: 昭和23(れ)1878 / 裁判年月日: 昭和24年5月10日 / 結論: 破棄差戻
一 原判決は鑑定人A作成の鑑定書並に鑑定人B、同C作成の鑑定書中の記載を證據として判示第二の事實を認定しているか原審の各公判調書には右の兩鑑定書につき證據調をした旨の記載がないこと所論の通りである。従つて右の兩鑑定書については證據調がなされなかつたものと認めなければならない。よつて論旨は理由があり原判決はこの點に於いて…
規範
証拠調の請求は公判中心主義に基づき公判廷で行うことが原則であり、絶対的上告理由(旧刑訴法410条14号)である「公判においてした証拠調の請求に対する不作為」とは、公判期日の公判廷における請求(旧刑訴法344条)を指す。一方、公判廷外での請求は、裁判所に対する証拠提出命令や召喚状発布等の処分請求(旧刑訴法324条3項)と解され、これに対する決定を欠くことは違法ではあるが、直ちに絶対的上告理由を構成するものではない。絶対的上告理由は、判決への影響を問わず常に破棄理由となるものであるから、厳格に解釈すべきである。
重要事実
弁護人が、公判期日外の書面によって複数の証人の喚問を申請した。原審裁判所は、第3回公判期日において当該申請の採否を留保する旨を告げたが、その後特段の決定をすることなく結審し、判決を言い渡した。申請された証人の立証趣旨は被告人の性格や素行等であったが、原審は既に20人以上の証人尋問や精神鑑定を実施しており、事実関係の取調べは一定程度進んでいた。
あてはめ
本件の証人尋問申請は公判廷外でなされたものであるため、旧刑訴法324条に基づく処分請求に当たり、これに決定をしないことは同条4項違反となる。しかし、これは公判廷における請求(344条)ではないため、絶対的上告理由(410条14号)には当たらない。また、本件では既に職権または申請により20人余の証人尋問や精神鑑定が実施されており、立証予定事項(被告人の性格等)は十分に取調べられている。したがって、決定を欠いた違法があったとしても、本件においては原判決の結果に影響を及ぼさないことが明らかである。
結論
本件の請求不作為は絶対的上告理由に該当せず、また、他の証拠調べにより立証事項が尽くされているため、判決に影響を及ぼす違法とも認められない。よって上告は棄却される。
実務上の射程
現行刑訴法においても、証拠決定の不作為が直ちに重大な手続違反となるわけではないという理解に資する。特に「判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反」(411条1号)の存否を検討する際、他の立証状況に照らして補充性の乏しい証拠請求への不作為は、実務上、取消事由となりにくいことを示唆している。
事件番号: 昭和23(れ)1435 / 裁判年月日: 昭和24年3月3日 / 結論: 棄却
原判決が、判示事實を認定するに當り、原審における證人A、同Bの各訊問調書をそれぞれ證據として採用していること、右各證人は、昭和二三年四月二一日原審が現状檢證した際に訊問し、その訊問には被告人が立會つていないことは、所論のとおりである。ついで、八月二六日の公判期日において、右各證人訊問調書につき適法な證據調をした際にも被…