一 原判決は鑑定人A作成の鑑定書並に鑑定人B、同C作成の鑑定書中の記載を證據として判示第二の事實を認定しているか原審の各公判調書には右の兩鑑定書につき證據調をした旨の記載がないこと所論の通りである。従つて右の兩鑑定書については證據調がなされなかつたものと認めなければならない。よつて論旨は理由があり原判決はこの點に於いて破毀を免れない。 二 原審の公判調書を調べてみると、第一回公判に於て辯護人がa村bの部落會長を證人として申請したのに對して、原審はこの請求につき採否決定を留保したまゝ右の部落會長を證人として喚問することもなく右の請求を却下する旨の決定をもしないで終結している。かような違法が上告の理由となること所論の通りであつて原判決はこの點に於いても破毀を免れない。
一 證據調を經ない鑑定書を證據に採つた判決の違法 二 證人申請の採否を留保したまゝ結審した判決の違法
舊刑訴法336條,舊刑訴法340條1項,舊刑訴法344條,舊刑訴法410條14號
判旨
証拠調べが行われていない鑑定書を事実認定の証拠として用いること、および証人尋問請求に対し採否の決定を行わないまま審理を終結させることは、いずれも訴訟手続の法令違反として破棄事由となる。
問題の所在(論点)
1. 証拠調べを経ていない鑑定書を事実認定の証拠とすることの適否。2. 証人尋問の請求に対し、採否の決定を行わずに審理を終結させる手続の適否。
規範
1. 事実の認定は、適法な証拠調べを経た証拠に基づかなければならない。公判調書に証拠調べをした旨の記載がない資料を事実認定の基礎とすることは許されない。2. 証拠調請求に対しては、裁判所は採否の決定をしなければならず、決定を留保したまま喚問も却下もせずに審理を終結させることは、訴訟手続の法令違反となる。
重要事実
被告人に対する刑事裁判において、原審(控訴審)は鑑定人A、B、C作成の各鑑定書を証拠として事実を認定した。しかし、公判調書にはこれら鑑定書について証拠調べをした旨の記載がなかった。また、弁護人が第一回公判において部落会長を証人として申請したが、原審はこれに対し採否の決定を留保したまま、証人尋問も請求却下の決定も行うことなく、審理を終結させて判決を言い渡した。
事件番号: 昭和23(れ)1473 / 裁判年月日: 昭和24年2月8日 / 結論: 破棄差戻
右訊問調書については原審公判廷では適法な證據調をしたものと認めるに由なく、かかる證據調をしない右訊問調書を犯罪事實認定の資料に供した原判決は採證の法則に反した違法であるもので右の違法は原判決に影響を及ぼすものといわなければならない。
あてはめ
1. 原審は鑑定書を証拠として事実を認定しているが、公判調書上、証拠調べがなされた形跡がない以上、証拠調べがなされなかったものと認めざるを得ない。2. 弁護人による証人尋問請求に対し、裁判所は採否を決定すべき義務があるにもかかわらず、決定を留保したまま手続を終了させたことは、適正な証拠調べの手続を怠ったものといえる。これらはいずれも判決に影響を及ぼすべき違法な手続である。
結論
原判決には、証拠調べを経ていない証拠による事実認定および証拠請求に対する決定の懈怠という違法があるため、破棄を免れない。本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
実務上の射程
証拠裁判主義(刑訴法317条)および証拠調べの手続的適法性の重要性を強調する判例である。答案上では、公判手続の適法性や証拠調べの要否が問題となる場面で、手続的瑕疵の具体例として引用できる。特に証拠請求に対する「放置」が違法となる点に実務上の意義がある。
事件番号: 昭和23(れ)1016 / 裁判年月日: 昭和24年3月5日 / 結論: 破棄差戻
原審公判調書を精査するも、右押収物件について舊刑訴法第三四一條第一項の證據調手續を履踐した證跡がない、しからば、原判決は適法な證據調を經ない、證據物を證據とした違法があるのであつてこの點において原判決は破毀を免れないものである。