刑事訴訟法第四一〇條第一三號に法律の規定により公判廷において取調ぶべき證據の取調を爲さざりしときとあるのは、同法第三四二條の如く、特に法律の明文を以て公判廷において取調ぶべきことを規定した場合に取調をなさなかつたときを指すものであつて、裁判所が必要と認めない押收證據物について決定の證據調をしない場合の如きはこれに該當しない。
刑訴法第四〇一條一三號の「法律に依り公判において取調ぶべき證據と採證の用に供しない押收物
刑訴法410條13號,刑訴法341條,刑訴法345條2項
判旨
裁判所が犯罪の証明に必要でないと判断した押収物について、法定の証拠調べを行わなかったとしても、刑事訴訟法上の違法(旧法410条13号等)には当たらない。
問題の所在(論点)
裁判所が犯罪事実の認定に用いないと判断した押収物について、法定の証拠調べの手続きを省略することは、証拠調べを怠った違法に該当するか。また、共謀の事実がある場合に、被告人が直接持ち出していない物件についても「盗み取った」旨の供述として証拠採用できるか。
規範
「法律の規定により公判廷において取調ぶべき証拠の取調を為さざりしとき」とは、法律が特に公判廷での取り調べを明文で規定している場合に、その手続きを怠った場合を指す。したがって、裁判所が必要と認めない押収物について証拠調べを行わなかったとしても、直ちに違法とはならない。
重要事実
強盗被告事件において、原審は押収された証拠品(白包布、行李、毛布等)を被告人に示して意見を求める等の証拠調べを行わなかった。弁護人は、これらの物件が第一審で証拠物となっており、刑事訴訟法に基づき公判廷で示されるべき証拠であるにもかかわらず、その手続きを怠ったことは判決に影響を及ぼす法令違反(旧法410条13号)に該当すると主張して上告した。また、被告人の供述についても、本人が直接窃取した事実を認めていないにもかかわらず「盗み取った」との供述として引用した原判決の証拠誤認を主張した。
あてはめ
まず、証拠調べの不実施について、本件原判決は問題の押収物を犯罪証明の証拠として引用していないことが記録上明らかである。裁判所が必要と認めず、判決の根拠にも用いない証拠物については、法定の提示・意見聴取手続きを行う必要はない。次に、証拠の趣旨誤解について、被告人は公判で第一審判決の犯罪事実に相違ない旨を回答しており、その事実には共謀による強取が含まれている。仮に他者が屋内から持ち出したとしても、被告人自身がそれを運搬したと述べている以上、これらを総合して「共謀の上盗み取った」旨の供述として認定することは、証拠の合理的解釈の範囲内である。
結論
裁判所が証拠として採用しない押収物につき証拠調べの手続きを履践しなかったとしても違法ではなく、被告人の供述の解釈についても証拠の趣旨を誤解したものとは認められない。
実務上の射程
裁判所が必要ないと判断し、かつ判決の基礎としていない証拠については、証拠調べ手続きの欠如を理由とする上告理由は成立しないことを示す。公判における証拠調べの要否と、判決の根拠となる証拠の範囲の対応関係を論じる際の参照となる。
事件番号: 昭和23(れ)1016 / 裁判年月日: 昭和24年3月5日 / 結論: 破棄差戻
原審公判調書を精査するも、右押収物件について舊刑訴法第三四一條第一項の證據調手續を履踐した證跡がない、しからば、原判決は適法な證據調を經ない、證據物を證據とした違法があるのであつてこの點において原判決は破毀を免れないものである。