一 證據調の範圍は原審の自由裁量にまかせられてあるのであるから、原審において取調の必要がないと認めた場合は被告人の申請した證人を調べなかつたとしても違法とはいえない。 二 法律により公判において取調ぶべき證據の取調をなさざるときというのは刑事訴訟法第三四二條の如く公判において證據調をなすべき旨を法律に規定されている場合に證據調をしない場合をいうのであつて證據調を爲すべきか否かを裁判所の自由裁量にまかせられている場合に證據調の必要なしと認めてこれをしなかつたような場合を指すものではない。 三 すでに強盜行爲を謀議した上見張りをした事實がある以上は被告人の行爲を以て強盜の共同正犯と解しこれに對し共同正犯の法條を適用したことは當然である。
一 證人申請の却下と裁判所の自由裁量 二 刑訴法第四一〇條第一三號の意義 三 強盜の見張と強盜の共同正犯
刑訴法337條,刑訴法344條,刑訴法410條13號,刑訴法342條,刑法236條,刑法60條
判旨
裁判所には証拠調べの必要性を判断する自由裁量があり、法律上義務付けられた場合を除き、申請された証人を採用しないことは直ちに違法とはならない。また、強盗の謀議に加わり見張りを行った事実は、強盗の共同正犯として処断されるべき十分な根拠となる。
問題の所在(論点)
事実審裁判所が、被告人の申請した証人の取り調べを行わないこと、および強盗の謀議に参加し見張りを行った者を共同正犯と認定することの適法性が問題となった。
規範
証拠調べの範囲については、事実審裁判所の自由裁量に委ねられている。したがって、裁判所が取調の必要がないと認めた場合には、被告人が申請した証人を採用しなかったとしても、法律により公判において取り調べるべき証拠の取調をなさなかった違法(旧刑事訴訟法342条関連)には当たらない。
重要事実
被告人AおよびBは、他の共犯者らと強盗行為を謀議した上で、その実行に際して見張りを行ったとして強盗の共同正犯で起訴された。原審は、被告人側が申請した証人らのうち一部の尋問を決定したが、後に職権で一部の証人採用を取り消し、あるいは特定の証人(証人E)の尋問を行わなかった。これに対し被告人らは、証拠調べが不十分であることや、見張りの事実がないこと、量刑不当などを理由に上告した。
あてはめ
まず、証拠調べの要否については、裁判所が必要なしと判断して取り調べないことは自由裁量の範囲内である。本件において、原審が一部の証人決定を取り消し、あるいは取り調べを行わなかったのは、その必要がないと判断したものと解されるため適法である。次に、共犯関係について、原審が認定した証拠によれば、被告人らは強盗を謀議した上で見張りを行っている。実行行為の一部を分担し、あるいは共謀に基づき見張りを行った事実は、強盗罪の共同正犯の成立を認めるに足りるものである。さらに、執行猶予の適否も事実審の裁量に属する事項である。
結論
被告人が申請した証人を採用しないことや、謀議および見張りを行った被告人を共同正犯と認めることに違法はなく、本件各上告は棄却される。
実務上の射程
証拠調べの必要性に関する裁判所の裁量権を確認した判例であり、実務上、証拠決定の取消しや不採用が直ちに訴訟手続の法令違反とはならないことの根拠となる。また、見張り役の共同正犯成立を肯定する実務を追認する内容である。
事件番号: 昭和24(れ)1612 / 裁判年月日: 昭和24年9月15日 / 結論: 棄却
憲法第三七條第二項は被告人又は辯護人からした申請に基きすべての證人を喚問し不必要と思われる證人までをも悉く訊問しなければならぬという譯でなく、證人申請の採否は、當該裁判所に實驗則に反しない限りにおいてその裁量にまかされていることがらであることは當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第二三〇號、同年七月二九…