右訊問調書については原審公判廷では適法な證據調をしたものと認めるに由なく、かかる證據調をしない右訊問調書を犯罪事實認定の資料に供した原判決は採證の法則に反した違法であるもので右の違法は原判決に影響を及ぼすものといわなければならない。
適法な證據調をしない訊問調書により事實を認定した判決の違法
舊刑訴法340條,舊刑訴法336條
判旨
裁判所が犯罪事実を認定する際、公判廷において適法な証拠調べを経ていない書類を証拠として供することは、採証の法則に反する違法であり、判決に影響を及ぼすべき法令の違反となる。
問題の所在(論点)
公判廷において適法な証拠調べ手続き(読聞かせ等)を経ていない書類を、判決の基礎となる事実認定の資料に供することの可否、およびそれが判決に及ぼす影響。
規範
裁判所が事実認定の資料とする証拠は、公判廷において適法な証拠調べ(書類の読聞かせ又は要旨の告知、及び被告人への意見弁解の機会付与等)を経たものでなければならない。適法な証拠調べの手続きを欠いた証拠によって事実を認定することは、採証の法則に反し許されない。
重要事実
第一審裁判所が法廷外で証人Bを訊問して作成した訊問調書が存在した。原審(控訴審)は、第一審の各公判調書については証拠調べを行ったが、当該法廷外訊問調書については、公判調書上、読聞かせや要旨の告知、被告人への意見弁解の聴取を行った事跡が一切認められなかった。しかし、原判決は、この適法な証拠調べを経ていない訊問調書を他の証拠と不可分的に総合し、犯罪事実を認定した。
事件番号: 昭和23(れ)1878 / 裁判年月日: 昭和24年5月10日 / 結論: 破棄差戻
一 原判決は鑑定人A作成の鑑定書並に鑑定人B、同C作成の鑑定書中の記載を證據として判示第二の事實を認定しているか原審の各公判調書には右の兩鑑定書につき證據調をした旨の記載がないこと所論の通りである。従つて右の兩鑑定書については證據調がなされなかつたものと認めなければならない。よつて論旨は理由があり原判決はこの點に於いて…
あてはめ
記録によれば、原審の公判調書において当該訊問調書の証拠調べを行った事跡が確認できない。すなわち、刑事訴訟法が定める適法な証拠調べ(内容の告知と防御機会の保障)を欠いているといえる。それにもかかわらず、原判決が当該調書を事実認定の基礎としたことは、証拠裁判主義および適正な採証法則に抵触する重大な手続き上の違法がある。この違法は、事実の認定に直接関与している以上、判決に影響を及ぼすべき法令の違反に該当すると判断される。
結論
適法な証拠調べを経ていない証拠を事実認定に用いることは違法である。よって、原判決を破棄し、本件を東京高等裁判所に差し戻す。
実務上の射程
証拠裁判主義(刑訴法317条)および証拠調べの手続き(刑訴法305条等)の重要性を説く基本判例である。答案上では、公判廷に出されていない資料(書面や取調状況報告書等)を裁判所が事実認定に用いた場合の違法性を指摘する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)1555 / 裁判年月日: 昭和26年4月12日 / 結論: 破棄差戻
一 原判決が所論A提出の盗難被害届の記載を、原判決挙示の他の証拠と共に綜合して判示被告人の犯行を認定したものであることは所論のとおりである。 二 しかるに原審公判調書によれば、原審においては、ただ「各訊問調書並各聴取書、原審公判調書並判決書、上申書及病気診断書」についてのみ順次読聞け又はその要旨を告げ、次いで押収品並び…
事件番号: 昭和23(れ)554 / 裁判年月日: 昭和23年10月12日 / 結論: 棄却
一 論旨は、被告人が警察署において不法に監禁され、違法若しくは不當な取扱をうけたことを非難するにある。しかし、たとえそのような事實があつたとしても、それがために所論のように公訴の提起が無効になると云ういわれはなく、又それがために被告人に對し無罪の判決を言渡さなければならないという筋合もない。 二 原審判決に對する上告は…