一 論旨は、被告人が警察署において不法に監禁され、違法若しくは不當な取扱をうけたことを非難するにある。しかし、たとえそのような事實があつたとしても、それがために所論のように公訴の提起が無効になると云ういわれはなく、又それがために被告人に對し無罪の判決を言渡さなければならないという筋合もない。 二 原審判決に對する上告は、その判決自體か、又はその判決の基本となつた審判の訴訟手續かが法令に違反したことを理由としなければならないものである。假りに被告人が、警察署に於て不法に監禁され、違法若しくは不當な取扱を受けたとしても、それは右の何れの場合にもあたらないことであるから、論旨は上告の理由として適法なものと云うことができない。 三 本來、公判廷外における訊問に對する供述は、それがそのまま證據となるのではなく、その調書が書證として證據になるのであり、その内容は必ず被告人に讀み聞けられ、それに對して不滿があれば、被告人は更に審問することを請求し得るものである。そうして前記のように裁判長は被告人に對し特に右の請求ができることを告げたにも拘はらず、被告人からその請求をしなかつたのであるから、被告人が所論の證人訊問の際に立會はなかつたことは、原判決破毀の理由とならないものというべきである。(昭和二三年(れ)第一〇五四號、同年九月二二日判決)。
一 警察署における不法監禁と控訴の適否 二 警察署における不法監禁と上告理由 三 公判廷外における證人訊問に被告人が立會はなかつた場合と上告理由
刑訴應急措置法8條3號,刑訴應急措置法12條1項,刑訴法127條,刑訴法411條,刑訴法326條,刑訴法340條1項
判旨
捜査段階における不当な身体拘束等の違法は公訴提起の効力や無罪判決の理由に直接影響せず、また、被告人が立会わなかった証人訊問調書等についても、公判廷での証拠調べ手続きを経て異議や再尋問の機会が与えられていれば適法である。
問題の所在(論点)
1. 捜査段階における不法な監禁等の違法が公訴提起の有効性や実体判決に影響を及ぼすか。2. 被告人が立ち会っていない公判廷外の証人訊問の結果を証拠とすることが許されるか。
規範
1. 捜査段階における身体拘束の態様や取扱の違法は、それ自体が直ちに公訴提起を無効とするものではなく、また無罪判決を言い渡すべき理由にもならない。2. 証拠調べの範囲の決定は裁判所の裁量に属する。3. 被告人が立会わなかった公判廷外の証人訊問等の結果については、公判廷において当該調書を読み聞かせ、意見弁解の機会及び作成者等の喚問を請求できる旨を告知した上で、被告人が請求を行わなかった場合には、手続上の違法とはならない。
事件番号: 昭和23(れ)1473 / 裁判年月日: 昭和24年2月8日 / 結論: 破棄差戻
右訊問調書については原審公判廷では適法な證據調をしたものと認めるに由なく、かかる證據調をしない右訊問調書を犯罪事實認定の資料に供した原判決は採證の法則に反した違法であるもので右の違法は原判決に影響を及ぼすものといわなければならない。
重要事実
被告人は警察署において不法に監禁され、違法・不当な取扱いを受けたと主張した。また、原審は被告人が申請した証人6名のうち2名のみを採用し、さらに実地検証の際に被告人を出席させないまま証人訊問を実施した。原審の第3回公判において、裁判長はこれらの検証調書及び証人訊問調書を読み聞かせ、被告人に対して意見の有無を問い、証人の喚問請求や他の証拠提出が可能である旨を告げたが、被告人は特に請求を行わなかった。
あてはめ
1. 被告人が主張する不法監禁等の事実は、判決自体やその基本となった審判の訴訟手続の法令違反を構成するものではないため、上告理由には当たらない。2. 証人採用の限定は裁判所の専権事項であり適法である。3. 公判廷外の供述は調書として証拠となるが、本件では裁判長が適式に調書の読み聞かせを行い、さらに再度の審問請求が可能である旨を教示している。被告人が自らその請求をしなかった以上、証人訊問時に立ち会わなかったことは判決を破棄すべき理由にはならない。
結論
本件上告を棄却する。捜査段階の違法は公訴の無効や無罪の理由とはならず、また、手続き保障がなされた上での証拠調べに違法はない。
実務上の射程
捜査の違法と公訴提起の効力の切り離し(公訴棄却の否定)を示す初期の判例である。また、伝聞証拠の証拠調べにおける被告人の訴訟権利(再尋問権等)の放棄と手続の適法性を判断する際の基礎となる。
事件番号: 昭和24(れ)2206 / 裁判年月日: 昭和24年12月26日 / 結論: 棄却
原審第二回公判調書には、證據調に際して被告人に對して意見辯解を述べる機會を與えた旨が記載されている。その際辯護人にもその機會を與えたということは、特に記載されてはいないけれども、辯護人は公判廷に立會つていたのであるから、意見辯解を述べることができた筈である。(特に辯論を制限したよな事實は認められない)それ故に原審の證據…