原審第二回公判調書には、證據調に際して被告人に對して意見辯解を述べる機會を與えた旨が記載されている。その際辯護人にもその機會を與えたということは、特に記載されてはいないけれども、辯護人は公判廷に立會つていたのであるから、意見辯解を述べることができた筈である。(特に辯論を制限したよな事實は認められない)それ故に原審の證據調には所論のような違法はない。
公判調書に公判廷に立會つた辯護人に意見辯解を述べる機會を與えた旨の記載のない場合その證據調の適否
舊刑訴法410條11號,舊刑訴法347條1項,舊刑訴法349條2項,舊刑訴法60條,舊刑訴法64條
判旨
公判期日外の証人尋問手続には公判手続の更新規定(旧刑訴法353条)の適用はなく、また、公判廷に立ち会っている弁護人に特に証拠調査に対する意見陳述の機会を改めて付与しなくとも、特段の制限がない限り違法ではない。
問題の所在(論点)
1. 公判期日の間に行われた公判廷外の証人尋問について、公判手続の更新規定(現行法315条参照)の適用があるか。2. 証拠調査に際し、立会中の弁護人に意見陳述の機会を与えた旨が調書上明記されていない場合、証拠調査手続に違法があるといえるか(現行法305条等参照)。
規範
1. 公判手続の更新に関する規定は、公判廷外における証人尋問手続には適用されない。2. 証拠調査の際、被告人に意見陳述の機会が与えられ、かつ弁護人が公判廷に立ち会っている場合には、特段の弁護制限の事実がない限り、弁護人に対し重ねて意見陳述の機会を与える旨を個別に明示しなくとも、適法に証拠調査が行われたものと解する。
重要事実
被告人3名に対する刑事裁判において、第1回公判と第2回公判との間に公判廷外での証人尋問が行われたが、原審は当該手続を更新せずに審理を継続した。また、第2回公判調書には、証拠調査に際して被告人に意見・弁解の機会を与えた旨の記載はあるが、立ち会っていた弁護人に対して同様の機会を与えた旨の明示的な記載はなかった。弁護人は、これらの手続的瑕疵を理由に上告した。
あてはめ
1. 旧刑訴法353条(更新規定)は、あくまで公判手続の更新を定めたものであり、性質上、公判廷外の尋問には及ばないと判断される。2. 弁護人は公判廷に現に立ち会っており、特に弁護活動を制限されたような事情は認められない。したがって、被告人に意見陳述の機会が与えられている以上、立ち会っている弁護人も当然に意見を述べることが可能な状態にあったといえ、手続的な瑕疵は存在しない。
結論
本件証拠調査および公判手続に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
公判廷外の証拠調べと更新規定の関係を明確にした。また、弁護人の権利保障に関し、形式的な手続の告知がなくとも、実質的に防御権の行使が可能な状態(公判立会い等)であれば、証拠調査の適法性を肯定できるという実務的な判断枠組みを示している。ただし、現代の適正手続の観点からは、弁護人に対しても明示的に意見を求めるのが通例である。
事件番号: 昭和26(れ)733 / 裁判年月日: 昭和26年7月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公判調書において被告人が前回の公判調書記載の犯罪事実と同趣旨の供述をした旨が記載されている場合、当該証拠に基づき事実を認定することは適法であり、証拠によらずに事実を認定した違法はない。 第1 事案の概要:被告人らの刑事事件において、原審の第9回公判調書には「裁判長は被告人等に対し、右第5回・第6回…