参考として提出せられた歎願書の如きものは、その書類の性質上證據書類とはいえない。
歎願書の性質
舊刑訴法340條
判旨
被告人の利益のために提出された示談書や歎願書は、性質上証拠書類ではなく参考書類に当たると解される。また、仮に証拠書類であっても、弁護人が公判廷で提出し裁判所及び検察官が閲覧したものは、証拠調手続を厳格に経ずとも証拠として採用し得る。
問題の所在(論点)
弁護人が提出した示談書や歎願書を裁判所が受理し、記録に編綴する場合において、それらが証拠書類に該当するか、また、証拠書類である場合に厳格な証拠調手続を要するか。
規範
証拠書類のうち、歎願書等の性質を有するものは証拠書類ではなく参考書類として扱うのが相当である。また、証拠書類として提出されたものであっても、公判廷において被告人の利益のために提出され、裁判所及び検察官がその内容を閲覧・確認する機会を得たものについては、必ずしも法定の厳格な証拠調手続(旧刑事訴訟法340条参照)を経る必要はない。
重要事実
強盗被告事件の原審において、裁判長が被告人に利益となる証拠の有無を確認した際、被告人は「ない」と答えたが、弁護人が示談書1通及び歎願書5通を提出した。裁判長はこれらの書類を部員と共に検閲し、立会検事に示した上で、本件記録に編綴する旨を告げた。上告人は、これらの書類について適法な証拠調手続がなされていない旨を主張して上告した。
あてはめ
まず、本件で提出された歎願書の如きものは、その性質上、事実を認定するための「証拠書類」とはいえず、裁判の情状に関する「参考書類」として提出されたものとみるのが相当である。次に、示談書等が仮に証拠書類としての性質を持つとしても、本件では弁護人が被告人の利益のために公判廷で提出しており、かつ裁判所及び検察官がその内容を閲読・確認する手続を経ている。このような状況下では、実質的な証拠能力の担保や当事者の防御権付与の趣旨は達せられており、厳格な証拠調手続を欠いたとしても手続上の違法があるとはいえない。
結論
本件書類の取り扱いに違法はなく、証拠調手続の不備を理由とする上告は理由がない。
実務上の射程
刑事訴訟法における証拠書類と参考書類の区別、および被告人側の利益証拠に関する手続の弾力的運用を認めた射程を有する。ただし、現行法下での証拠調べ(刑訴法304条、305条等)の重要性に鑑み、主に参考書類(情状に関する書面)の扱いや、訴訟手続の瑕疵の治癒という文脈で参照されるべき判例である。
事件番号: 昭和24(れ)1546 / 裁判年月日: 昭和24年10月29日 / 結論: 棄却
一 公判期日における召喚手續の履踐については、之は記録上明確にしなければならないと言う法令の根據はないのであつて、したがつて、このことが記録上は明確でないと言うことの一事をもつては、その召喚手續が適法に行われなかつたと言う結論には到達し得ないのである。(昭和二三年(れ)第八二六號同年一二月四日第二小法廷判決参照) 二 …