一 公判期日における召喚手續の履踐については、之は記録上明確にしなければならないと言う法令の根據はないのであつて、したがつて、このことが記録上は明確でないと言うことの一事をもつては、その召喚手續が適法に行われなかつたと言う結論には到達し得ないのである。(昭和二三年(れ)第八二六號同年一二月四日第二小法廷判決参照) 二 所論第七回公判期日の被告人に對する召喚手續に關し、その判決郵便送達報告書中の氏名の記載が「A」と記載されてあることは所論指摘の所りであるが未だ右送達報告書の記載だけでは、被告人に對し現實に送達された召喚状の氏名の記載までが、右と同様の記載であつたとは之を斷定できないのみでなく、被告人(及び石川辯護人)は該召喚期日である昭和二四年一月一三日の所論第七回公判期日に出頭し、被告人及び石川辯護人とも何等の異議を述べず、審理が行われたものであることは同公判調書上明白である。しからば寧ろ被告人に現實に送達された召喚状には「B」と記載されてあつたものと認むることを相當とする。されば所論指摘の送達報告書の前示記載は「B」と書くべきを、誤記したものであることは明らかである。
一 召喚手續について記録上明かでない場合と召喚手續の適否 二 公判期日の被告人に對する召喚手續に關し、その判決郵便送達報告書中の氏名の誤記と公判調書中に記載による誤記たることの認定
舊刑訴法320條2項,舊刑訴法84條1項
判旨
公判期日の召喚手続の履践を記録上明確にすべき法令上の根拠はなく、記録に証跡がないことのみで召喚が不適法とはいえない。また、召喚状送達報告書に氏名の誤記があっても、被告人が異議なく出頭し審理が行われた場合は、手続は適法と解される。
問題の所在(論点)
1. 公判期日の召喚手続の履践が記録上不明確であることは、訴訟手続の違法を構成するか。 2. 送達報告書の氏名に誤記がある場合に、召喚手続の効力が否定されるか。
規範
1. 公判期日における召喚手続の履践について、これを記録上明確にしなければならないという法令の根拠はなく、記録上の証跡がないことをもって直ちに召喚手続が不適法であったと解することはできない。 2. 召喚状送達報告書の氏名に誤記がある場合であっても、被告人及び弁護人が召喚期日に出頭し、何ら異議を述べずに審理が行われたときは、適法な送達があったものと推認され、召喚手続に違法はない。
重要事実
被告人が第4回公判期日に出頭した際、記録上被告人に対する召喚手続の証跡(召喚状送達の記録等)が認められなかった。また、第7回公判期日の郵便送達報告書において、被告人の氏名が「B」ではなく「A」と誤記されていた。しかし、被告人及び弁護人は当該期日に出頭し、何ら異議を述べることなく審理に応じた。上告人は、これらの召喚手続に違法があるとして上告した。
あてはめ
1. 第4回公判期日に関し、被告人への召喚手続を記録上明確にすべき法令の根拠は存在しないため、証跡がない一事をもって不適法と断定することはできない。 2. 第7回公判期日に関し、送達報告書の氏名が「A」とされていたとしても、現実に送達された召喚状まで誤記されていたとは断定できない。特に、被告人と弁護人が実際に指定期日に出頭し、異議なく審理に応じているという事実に照らせば、報告書の記載は単なる誤記であり、適法な召喚状が送達されていたと認めるのが相当である。
結論
被告人及び弁護人が期日に出頭し、異議なく審理が行われている以上、召喚手続に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
召喚手続や送達手続における形式的不備が主張される場面で、訴訟経済や信義則の観点から「被告人の出頭・異議の有無」を重視して手続を有効と判断する際の根拠となる。ただし、被告人が不出頭のまま審理が強行された場合には、本判決の射程は及ばない。
事件番号: 昭和24(れ)1733 / 裁判年月日: 昭和24年10月22日 / 結論: 棄却
参考として提出せられた歎願書の如きものは、その書類の性質上證據書類とはいえない。