一 検事が公判廷で原判決を引用して被告事件の要旨を陳述した場合に、その判決の摘示事実に、犯行の年月日について誤記があつても、起訴した公訴事実の同一性を害しないときは、右被告事件の陳述は適法である。 二 自首減輕をするか否かは、裁判所の事由裁量に任されているところであり、かかる事實ありとの主張が、刑事訴訟法第三六〇條第二項の「刑ノ加重減兔ノ原由タル事實上ノ主張」に該當しないこと、當裁判所屡次の判例の示す通りである。故に原審が自首減輕又は酌量減輕をするときの外は原判決に之を例示する必要はない。
一 検事が犯行の年月日につき誤記のある原判決を引用してなした被告事件の要旨の陳述 二 自首又は酌量減輕の事由判示の要否
刑訴法345条,刑訴法360條2項,刑法42條1項,刑法66條
判旨
公訴事実の特定において、犯行年月日に誤記がある場合であっても、共犯者や被害者、行為態様により事件が特定されている限り、公訴事実の特定を害せず、手続上の違法はない。
問題の所在(論点)
公訴事実における犯行年月日の誤記が、公訴事実の特定(刑事訴訟法256条3項)に欠けるものとして、手続上の違法となるか。
規範
公訴事実の特定は、他の事実と識別できる程度に行われていれば足りる。単に犯行年月日の点に不備や誤記があっても、公訴事実の内容(当事者、行為、被害者等)により当該事件が他と区別して特定されている限り、特定を害することはない。
重要事実
被告人が共犯者Aと共謀し、自動車運転手Bを脅迫して金品を強取した強盗事件。公判請求書や原判決において、犯行年月日を「昭和22年8月8日」と記載していたが、記録上は「昭和21年8月8日」の誤りであることが明らかであった。弁護人は、この年月日の齟齬を理由に手続上の違法を主張した。
事件番号: 昭和22(れ)92 / 裁判年月日: 昭和22年12月4日 / 結論: 棄却
一 連續一罪を構成すべき數多の行爲を判示するには、各個の行爲の内容を一々具體的に判示することは要しない。數多の行爲に共通した犯罪の手段方法その他の事實を具體的に判示するの外、その連續した行爲の始期終期回數等を明かにし、且つ財産上の犯罪で、被害者又は贓額に異同があるときは、被害者中或る者の氏名を表示するの外、他は員數を掲…
あてはめ
本件では、被告人がAと共謀して運転手Bを脅迫・強取したという犯罪の具体的な内容が示されている。犯行年月日に1年の誤記があったとしても、記録上の前後関係から誤記であることは明白であり、被告人の防御や裁判の対象を識別する上で支障はない。したがって、公訴事実の同一性を害するものではなく、特定に欠けるところはないと解される。
結論
犯行年月日の誤記は公訴事実の特定を害しないため、本件公訴提起の手続に違法はない。
実務上の射程
公訴事実の特定の程度について、被告人の防御の範囲を画定し、二重処罰を防止できる程度に個別化されていれば、軽微な誤記は許容されることを示した。答案上は、訴因の特定が必要な趣旨(識別機能・防御機能)から論じ、多少の不備があっても他と識別可能であれば特定を肯定する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和23(れ)1501 / 裁判年月日: 昭和23年12月24日 / 結論: 棄却
一 公判請求書記載の事實と原判示事實との間に被害物品について多少の差異があるとしても、具體的な窃盜の犯行そのものには異同がないのであるから、原判決は審判の請求を受けない事件について判決し若しくはこれを受けた事件について判決しなかつた違法はない。 二 判決の認定事實における日時と公訴事實における日時とがたまたま異つていて…