一 刑訴應急措置法第八條第二號による緊急逮捕の場合において、逮捕手續に裁判官の逮捕状を得ることができない理由を被疑者に告知した事實につき、明確な記載がなかつたとしても、その一事を以つて、右告知がされなかつたものと斷定することはできない 二 緊急逮捕の場合において、裁判官の逮捕状を得ることができない理由を告知しなかつたため、逮捕そのものが違法であつても、(直に)適法な逮捕状が發せられた以上、その後作成された當該被疑者に對する檢事訊問調書を不法抑留中に作成された違法のものということはできない。 三 司法警察官が刑訴應急措置法第八條第二號により逮捕状の發令を請求するには、必ずしも、その理由を記載した書面により檢事を通じてこれをするを要しない。 四 緊急逮捕された被疑者に對し、既に適法な逮捕状が發せられた場合において、刑訴應急措置法第八條第四號による勾留状の請求を受けた裁判官が適法な手續を經て勾留状を發した以上、同裁判官において右勾留のため勾引状を發した瑕疵があつても右勾留状を無効であるということはできない。 五 承諾同行の美名のもとに其實強制を加えて被疑者を警察署に連行することは違法であつて嚴に之れを禁止しなければならない。
一 逮捕手續の記載と刑訴應急措置法第八條第二號所定の告知義務不履行の認定 二 違法に緊急逮捕された被疑者に對する檢事訊問調書の適否 三 刑訴應急措置法第八條第二號による逮捕状請求の方式 四 刑訴應急措置法第八條第四號による勾留のため勾引状を發した場合と勾留状の効力 五 強制を加えて被疑者を警察に連行することの違法
憲法33條,憲法31條,刑訴應急措置法8條2號,刑訴應急措置法8條4號,刑訴應急措置法8條1號,舊刑訴法89條,舊刑訴法90條
判旨
緊急逮捕時に逮捕状請求の遅滞等の違法があったとしても、その後に適法な逮捕状が発付されたのであれば、その後の検事訊問調書の証拠能力は否定されない。
問題の所在(論点)
緊急逮捕の手続に告知欠如等の違法がある場合、その後に適法な逮捕状が発付された後に作成された検事訊問調書の証拠能力が否定されるか(違法収集証拠排除法則の射程)。
規範
先行する逮捕手続に違法がある場合であっても、その後に適法な逮捕状が発付され、それに基づき身柄拘束が継続している間に作成された検事訊問調書については、不法抑留中に作成されたものとはいえず、直ちに証拠能力が否定されるものではない。
事件番号: 昭和23(れ)1473 / 裁判年月日: 昭和24年2月8日 / 結論: 破棄差戻
右訊問調書については原審公判廷では適法な證據調をしたものと認めるに由なく、かかる證據調をしない右訊問調書を犯罪事實認定の資料に供した原判決は採證の法則に反した違法であるもので右の違法は原判決に影響を及ぼすものといわなければならない。
重要事実
被告人に対し、司法警察官が刑訴応急措置法8条2号に基づき緊急逮捕を執り行った。その際、逮捕状を得ることができない理由の告知があったことを示す記録が存せず、また逮捕状請求手続等に瑕疵があるとの主張がなされた。しかし、本件の検事訊問調書は、司法警察官の請求に基づき裁判官が適法に発付した逮捕状の日付の翌日に作成されていた。
あてはめ
仮に、緊急逮捕時に逮捕状を得られない理由の告知を欠いた等の違法があったとしても、本件の検事訊問調書は適法な逮捕状が発令された後に作成されている。適法な逮捕状に基づく拘束下にある以上、当該調書を不法抑留中に作成された違法なものと断定することはできない。また、勾留手続において勾引状の発付に瑕疵があったとしても、その後の適法な勾留状が無効になるわけではなく、公判廷での供述の任意性や適法性に影響を及ぼさない。
結論
先行する逮捕手続に仮に違法があったとしても、適法な逮捕状発令後の検事訊問調書を証拠とすることは採証法則に違反せず、証拠能力は認められる。
実務上の射程
違法な身柄拘束と証拠収集の因果関係を否定した初期の判例である。現代の司法試験では「違法収集証拠排除法則」の文脈で検討されるが、先行手続の違法が後の適法な令状発付により遮断されるか、あるいは重大な違法として後の証拠まで排除されるかという、違法の承継・射程を論じる際の参照となる。
事件番号: 昭和24(れ)2206 / 裁判年月日: 昭和24年12月26日 / 結論: 棄却
原審第二回公判調書には、證據調に際して被告人に對して意見辯解を述べる機會を與えた旨が記載されている。その際辯護人にもその機會を與えたということは、特に記載されてはいないけれども、辯護人は公判廷に立會つていたのであるから、意見辯解を述べることができた筈である。(特に辯論を制限したよな事實は認められない)それ故に原審の證據…