辯護人が原審第一回公判廷において被告人の母を當日在延證人として訊問を申請したこと並びに原審においてその申請に對して特に却下の決定を言渡さなかつたことは所論の通りである。しかし在延證人の訊問申請があつたにかゝわらず、裁判所がこれを許容することなく當日の審理を終え新期日を指定告知した場合には暗默にその申請を却下する決定をしたものとみるのが相當である。(昭和二三年(れ)第三二三號同年六月二四言渡第一小法廷判決參照)
在延證人の訊問申請と默示の却下決定
舊刑訴法344條,舊刑訴法410條14號
判旨
在廷証人の尋問申請があったにもかかわらず、裁判所がこれを許容せずに当日の審理を終えて新期日を指定・告知した場合には、黙示的に当該申請を却下する決定があったものと解するのが相当である。
問題の所在(論点)
在廷証人の尋問申請に対し、裁判所が明示的な却下決定を行わずに公判手続を進行・終結させた場合、その訴訟手続は違法となるか。
規範
在廷証人の尋問申請に対し、裁判所が明示的な却下決定を下さなかった場合であっても、当該申請を許容することなく当日の審理を終結し、次回の判決言渡し期日等を指定・告知したときは、実質的に当該申請を認めない判断がなされたものとして、暗黙に却下決定があったものと解する。
重要事実
原審の第一回公判において、弁護人が被告人の母を当日在廷証人として尋問することを申請した。しかし、裁判所はこれに対して特段却下の決定を言い渡さず、検察官の意見を求めた上で当日の審理を終結した。その後、判決言渡し期日を指定・告知して閉廷したため、弁護側は訴訟手続に違法があると主張して上告した。
あてはめ
本件では、原審弁護人が在廷証人の尋問申請を行った際、裁判長は検察官の意見を聴取した上で、当日の審理を終結させている。さらに、次回の判決言渡し期日を指定・告知し、訴訟関係人に出頭を命じて閉廷している。このような一連の訴訟進行は、裁判所が当該証人の即時尋問を許容しない意思を明確に示したものであり、暗黙のうちに申請を却下する決定がなされたと評価できる。
結論
裁判所が明示的に却下を宣告しなくとも、審理を終結し次期日を指定した以上、暗黙の却下決定があったと認められるため、原審の訴訟手続に違法はない。
実務上の射程
証拠決定の不作為が訴訟手続の法令違反となるかどうかの判断において、裁判所の終局的な審理の態度から黙示的な決定を認める「黙示の却下」の法理を示す。実務上、取調未了の証拠があるまま結審した際の異議申し立てや上告理由の検討に際し、裁判所の訴訟指揮を合理的に解釈する枠組みとして活用される。
事件番号: 昭和26(れ)203 / 裁判年月日: 昭和26年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人側が証人尋問の申請をせず、適法な証拠調べ手続を経た供述書等の証拠採用については、憲法違反や手続上の違法を構成しない。 第1 事案の概要:被告人が起訴された事件において、原審(控訴審等)は関係者AおよびBの聴取書(供述書)を証拠として採用した。これに対し、被告人側は当該書類を証拠としたことは刑…