少年法第五〇條に引用されている同第九條(從つて少年審判規則第一一條)の規定は、少年に對する刑事々件の審理方針についての準據規定であつて、裁判所がなるべく同條所定の者の所定の事項について例示の専問知識を活用して調査を行うように努めなければならないとする訓示的規定である。されば、假りに裁判所が同條に準據しなかつたとしてもその規定の性質上審理手續を違法ならしめるものではない。しかも本件記録によれば原審々理が同條所定の方針に從つてなされたことを窮い知るに難くない。要するに、所論は結局原審に任かされている審理の範圍程度を非難するに歸し上告適法の理由とならない。
少年法第九條少年審判規則第一一條は訓示的規定である
少年法9條,少年法50條,少年審判規則11條
判旨
少年法50条により準用される同法9条(少年に対する刑事事件の審理における調査規定)は、裁判所の審理方針を定めた訓示的規定にすぎず、これに依拠しない審理であっても直ちに手続違法となるものではない。
問題の所在(論点)
少年法50条により準用される同法9条の規定(少年の性行、経歴、環境等に関する調査規定)が、刑事裁判における必要的履践事項としての効力を有するか、すなわち同規定に反する審理が手続違法となるか。
規範
少年法50条が準用する同法9条(および少年審判規則11条)の規定は、少年に対する刑事事件の審理方針についての準拠規定であり、裁判所が専門的知識を活用して調査を行うよう努めるべきことを定めた「訓示的規定」である。したがって、裁判所が同条の定める調査手続に準拠しなかったとしても、その規定の性質上、直ちに審理手続を違法とするものではない。
重要事実
被告人である少年の刑事事件につき、原審(二審)の審理手続において、少年法9条が定める調査(家庭裁判所調査官の調査等)や専門的知識の活用が十分になされなかったとして、弁護人が審理手続の違法を理由に上告を申し立てた事案である。
あてはめ
少年法9条の性格を検討するに、同条は少年の更生を目的とした刑事事件の審理の在り方を指し示した努力目標といえる。本件記録に照らせば、原審において同条所定の方針に沿った審理がなされたと認められ、どの程度の調査や審理を行うかは裁判所の裁量に委ねられている。したがって、弁護人が主張する調査の不十分さは、裁判所の裁量権の範囲内にある事項を非難するものにすぎない。
結論
少年法50条(同法9条準用)違反を理由とする上告は認められず、原審の審理手続に違法はない。
実務上の射程
刑事手続における少年法の準用規定が「訓示的規定」に留まることを示した判例である。答案上は、少年に対する刑事裁判において、家庭裁判所における保護事件のような厳格な社会調査が行われなかったとしても、直ちに刑訴法上の重大な違法(上告理由等)を構成しないことを説明する際に活用できる。
事件番号: 昭和26(れ)445 / 裁判年月日: 昭和26年6月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事手続における証拠調べの範囲の決定は、事実審の合理的な自由裁量に委ねられており、被告人の精神状態に関する再鑑定や鑑定人の尋問申請を却下したとしても、直ちに違法とはならない。 第1 事案の概要:被告人の精神状態が問題となった事案において、原審は既に提出されていた第一審公判廷での被告人の供述および鑑…