判旨
犯罪後の法律により刑の変更があった場合、新旧両法を比照して刑の軽重がないときは、刑法6条により行為時の法律を適用すべきである。
問題の所在(論点)
犯罪後に法定刑の変更があった場合において、新旧両法の刑を比照した結果、刑の軽重に差がないときの適用法の決定、および大赦があった場合の裁判上の措置が問題となる。
規範
刑法6条は「犯罪後の法律により刑の変更があったときは、その軽いものに従う」と規定する。これに基づき、新法(裁判時法)と旧法(行為時法)の法定刑を比較し、新法の刑が旧法より軽くない場合(軽重がない場合を含む)は、原則通り行為時法を適用する。この比較に際しては、主刑の種類(刑法10条)および罰金等臨時措置法等の特別規定を考慮して判断する。
重要事実
被告人は、昭和23年6月、連合国占領軍の財産である天幕やシートを所持していたとして、刑法256条2項(盗品等譲受罪)等の容疑で起訴された。犯罪行為時と裁判時との間で、罰金等臨時措置法の制定等により法定刑の変更が生じていた。また、一部の公訴事実については、訴訟の係属中に昭和27年政令第117号による大赦が実施された。
あてはめ
まず、占領軍財産の所持という公訴事実(第一の事実)については、昭和27年政令第117号による大赦の対象となったため、刑訴法337条3号に基づき免訴とされるべきである。次に、大赦の対象外である事実(第二の事実)について、行為時法(旧刑法)と裁判時法(罰金等臨時措置法適用後の刑法256条2項)を比較すると、重い懲役刑については両法で変更がなく、軽重の差が認められない。したがって、刑法6条および10条の趣旨に従い、行為時法を適用して処断するのが相当である。
結論
新旧両法の刑の軽重に差がない場合は行為時法を適用する。大赦があった事実については免訴とし、その他の事実は行為時法に基づき、被告人を懲役8月及び罰金1000円に処する。
事件番号: 昭和25(あ)1737 / 裁判年月日: 昭和27年3月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】占領軍財産の不法所持を処罰する政令は、施行前から正当な権限なく所持する行為が占領目的に有害な行為として処罰対象であった以上、事後的な権利侵害には当たらない。また、正当な権限に基づく所持は施行後も違法とされないため、当該政令は憲法に違反しない。 第1 事案の概要:被告人らは昭和22年政令第165号(…
実務上の射程
本判決は、刑法6条の「軽いものに従う」という文言の裏返しとして、軽重がない場合には行為時法主義が維持されることを確認したものである。答案上は、時的範囲の論点において、単に新旧比較を行うだけでなく、比較した結果「差がない場合」の処理として、刑法6条・10条を引用しながら行為時法を適用する論理構成の根拠として利用できる。
事件番号: 昭和25(あ)1626 / 裁判年月日: 昭和27年9月26日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】裁判所が諸般の情状により実刑を科し刑の執行猶予を言い渡さないことは基本的人権を侵害せず、また、大赦の対象となった公訴事実については免訴の言渡しをなすべきである。 第1 事案の概要:被告人両名は、共謀の上、昭和24年4月から6月にかけて7回にわたり、神戸市内の占領軍兵営付近の路上で、連合国占領軍の財…
事件番号: 昭和26(あ)2465 / 裁判年月日: 昭和28年1月23日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】公訴事実の一部について大赦があった場合には、当該部分について免訴を言い渡すべきであり、大赦の対象外の罪数については、適法な法令の適用に基づき併合罪として処断すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、法定の除外事由がないにもかかわらず、連合国占領軍の物資(ドル表示軍票以外のもの)を所持したとして、…
事件番号: 昭和25(あ)2088 / 裁判年月日: 昭和27年8月29日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】公訴事実にかかる罪について、上告審での判決前に大赦(昭和27年政令第117号)があった場合には、刑事訴訟法337条3号に基づき免訴を言い渡すべきである。 第1 事案の概要:被告人は昭和22年政令第165号違反の罪等により起訴され、第一審および原審で有罪判決を受けた。しかし、上告審の係属中に「大赦令…
事件番号: 昭和24(れ)1034 / 裁判年月日: 昭和24年12月6日 / 結論: 破棄差戻
一 本件は昭和二二年政令第一六五號連合國占領軍その将兵又は連合國占領軍に附屬し若くは附随する者の財産の收受及び所持の禁止に關する件第一條違反として不法收受の事實につき起訴したものであることは記録上明らかである。そして右不法收受の公訴事實には不法收受の實事を包含するものであるから不法收受事實について起訴された以上は、不法…