判旨
占領軍財産の不法所持を処罰する政令は、施行前から正当な権限なく所持する行為が占領目的に有害な行為として処罰対象であった以上、事後的な権利侵害には当たらない。また、正当な権限に基づく所持は施行後も違法とされないため、当該政令は憲法に違反しない。
問題の所在(論点)
昭和22年政令第165号が、公布施行によって直ちに従来の占領軍財産所持者を処罰対象とすることが、憲法の保障する基本的人権(適正手続や法の不遡及の趣旨)に違反し違憲とならないか。
規範
法規範の適憲性を判断するにあたっては、当該規範の施行前後における処罰対象の継続性、および正当な権利行使の保護の有無を基準とする。既存の処罰規定や占領目的等に照らし、既に有害とされていた行為を具体化・明確化する形式の法規は、基本的人権を侵犯するものではない。また、正当な権限に基づく既得の権利状態を遡及的に違法化しない限り、憲法違反の瑕疵は存しない。
重要事実
被告人らは昭和22年政令第165号(連合国軍財産等の所持等に関する政令)に違反し、占領軍財産を所持していたとして起訴された。弁護人は、同政令が公布施行された瞬間から、予告なく従来の所持者を違法な所持者とする点において基本的人権を侵犯し、憲法に違反すると主張して上告した。しかし、本件以前の昭和21年勅令第311号に基づき、正当な権限のない所持は既に占領目的に有害な行為として日本の裁判所での処罰対象となっていた背景がある。
あてはめ
まず、本件政令が施行される以前であっても、正当な権限なく占領軍財産を所持する行為は、連合国最高司令官の覚書に基づき占領目的に有害な行為として昭和21年勅令第311号により処罰可能であった。したがって、本件政令によって突如として違法化されたわけではなく、処罰の継続性が認められる。次に、本件政令は正当な権限に基づいて所持する場合までを違法とするものではない。以上から、被告人側の「なんらの予告なしに違法な所持者とする」という前提は事実を欠いており、憲法違反の主張は当たらない。
結論
昭和22年政令第165号は憲法に違反しない。したがって、被告人らの上告は棄却される。
事件番号: 昭和25(れ)1118 / 裁判年月日: 昭和25年10月26日 / 結論: 棄却
一 物の所持とは人がその実力支配下に物を保管する行為をいうのであるから、人が物を保管する意思をもつてこれに適応する実力支配関係を多少の時間継続して実現する行為をすれば、それによつて物の所持は成立するのである。そして一旦成立した所持が爾後存続するためには、その所持人が常にその物を所持することを意識している必要はないのであ…
実務上の射程
本判決は、占領下の特殊な法体系における罪刑法定主義や法の不遡及的運用に関する判断を示したものである。答案上は、法令の改正や制定がなされた際に、実質的に先行する禁止規範(勅令や覚書等)が存在し、かつ正当な権利を侵害しない構成であれば、憲法31条等の適正手続に反しないとするロジックとして参照し得る。
事件番号: 昭和23(れ)2115 / 裁判年月日: 昭和24年6月7日 / 結論: 棄却
原判決は、明らかに「連合國占領軍兵士から同兵士の財産であるサツカリン」を買受け又は販賣の斡旋を依頼せられ受取り、所持した事實を認定したものであるから、該サツカリンが前記政令第一條に掲げる財産中に包含されていることは毫も疑いがない。
事件番号: 昭和25(あ)1626 / 裁判年月日: 昭和27年9月26日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】裁判所が諸般の情状により実刑を科し刑の執行猶予を言い渡さないことは基本的人権を侵害せず、また、大赦の対象となった公訴事実については免訴の言渡しをなすべきである。 第1 事案の概要:被告人両名は、共謀の上、昭和24年4月から6月にかけて7回にわたり、神戸市内の占領軍兵営付近の路上で、連合国占領軍の財…
事件番号: 昭和23(れ)775 / 裁判年月日: 昭和24年4月9日 / 結論: 棄却
論旨は、政令の公布後短日月なること等より當時被告人は、當該行爲が法令上禁止せられているとの意識がなかつたと主張するのであるけれども法の不知は犯罪の違法性を阻却するものでないことは刑法の規定するところであつて、かりに被告人が具體的にいかなる法令によつてその行爲が禁止せられているかを知らなかつたとしても既に前段説明のごとく…
事件番号: 昭和25(れ)1767 / 裁判年月日: 昭和26年3月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法上の「所持」とは、対象物を自己の事実上の支配内におくことを意味し、その具体的態様まで判示する必要はない。また、刑の執行猶予を付すか否かは事実審裁判所の広範な自由裁量に属する。 第1 事案の概要:被告人は、昭和22年政令165号に違反する罪(具体的な対象物は判決文からは不明)に問われた。一審およ…