判旨
裁判所が諸般の情状により実刑を科し刑の執行猶予を言い渡さないことは基本的人権を侵害せず、また、大赦の対象となった公訴事実については免訴の言渡しをなすべきである。
問題の所在(論点)
裁判所が情状により執行猶予を付さないことが基本的人権の侵害に当たるか。また、訴訟継続中に公訴事実について大赦があった場合の法的措置はどうあるべきか。
規範
裁判所の広範な裁量に属する刑の量定において、諸般の情状に基づき執行猶予を付さない判断をすることは、憲法上の基本的人権を侵害するものではない。また、公訴事実について政令による大赦があった場合には、刑事訴訟法に基づき免訴の言渡しをすべきである。
重要事実
被告人両名は、共謀の上、昭和24年4月から6月にかけて7回にわたり、神戸市内の占領軍兵営付近の路上で、連合国占領軍の財産であることを知りながら軍人から衣類計187点を買い受けて収受した(占領軍財産収受・所持禁止政令違反)。さらに、別途窃盗罪(刑法235条)に該当する事実も存在した。原判決後に昭和27年政令第117号による大赦が実施され、占領軍財産収受の事実がその対象となった。
あてはめ
執行猶予の不付与については、裁判所の情状判断の結果であり、憲法違反には当たらない。他方、占領軍財産の収受に関する公訴事実については、昭和27年政令117号1条117号等により大赦があったことが認められる。大赦は刑事訴訟法337条3号の免訴事由に該当するため、当該事実については免訴を言い渡すべきである。残る窃盗罪については、刑法235条、60条、45条前段を適用し、懲役1年及び3年間の執行猶予を付すのが相当である。
結論
原判決を破棄する。大赦の対象となった事実については免訴とし、窃盗罪については被告人両名を各懲役1年に処し、3年間の執行猶予を言い渡す。
事件番号: 昭和25(あ)2088 / 裁判年月日: 昭和27年8月29日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】公訴事実にかかる罪について、上告審での判決前に大赦(昭和27年政令第117号)があった場合には、刑事訴訟法337条3号に基づき免訴を言い渡すべきである。 第1 事案の概要:被告人は昭和22年政令第165号違反の罪等により起訴され、第一審および原審で有罪判決を受けた。しかし、上告審の係属中に「大赦令…
実務上の射程
執行猶予の付与が裁判所の裁量事項であることを確認する際の根拠となるほか、大赦があった場合の免訴手続(刑訴法337条)の運用例として参照される。司法試験においては、量刑判断の妥当性や訴訟条件の欠如に関する基礎知識として位置づけられる。
事件番号: 昭和26(あ)2465 / 裁判年月日: 昭和28年1月23日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】公訴事実の一部について大赦があった場合には、当該部分について免訴を言い渡すべきであり、大赦の対象外の罪数については、適法な法令の適用に基づき併合罪として処断すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、法定の除外事由がないにもかかわらず、連合国占領軍の物資(ドル表示軍票以外のもの)を所持したとして、…
事件番号: 昭和25(あ)1737 / 裁判年月日: 昭和27年3月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】占領軍財産の不法所持を処罰する政令は、施行前から正当な権限なく所持する行為が占領目的に有害な行為として処罰対象であった以上、事後的な権利侵害には当たらない。また、正当な権限に基づく所持は施行後も違法とされないため、当該政令は憲法に違反しない。 第1 事案の概要:被告人らは昭和22年政令第165号(…
事件番号: 昭和25(あ)2426 / 裁判年月日: 昭和27年12月5日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】犯罪後の法律により刑の変更があった場合、新旧両法を比照して刑の軽重がないときは、刑法6条により行為時の法律を適用すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、昭和23年6月、連合国占領軍の財産である天幕やシートを所持していたとして、刑法256条2項(盗品等譲受罪)等の容疑で起訴された。犯罪行為時と裁…
事件番号: 昭和26(れ)2413 / 裁判年月日: 昭和27年6月13日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】判決確定前に大赦があった場合には、刑事訴訟法411条5号等に基づき、原判決を破棄した上で免訴を言い渡すべきである。また、大赦の対象とならない他の併合罪については、別途刑を量定して処断すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、連合国占領軍の財産であるジャケットを正当な理由なく所持した事実(連合国占…