判旨
判決確定前に大赦があった場合には、刑事訴訟法411条5号等に基づき、原判決を破棄した上で免訴を言い渡すべきである。また、大赦の対象とならない他の併合罪については、別途刑を量定して処断すべきである。
問題の所在(論点)
上告審において、公訴事実の一部について大赦があったことが判明した場合、裁判所はどのような措置を講ずべきか。
規範
被告事件について大赦があったときは、免訴の言渡しをしなければならない(刑事訴訟法337条1号参照)。上告審において職権で調査した結果、公訴事実の一部について政令による大赦が認められる場合には、当該部分について原判決を破棄し、免訴の自判を行うべきである。この際、他の罪数関係にある事実については、あらためて併合罪としての刑を画定する。
重要事実
被告人は、連合国占領軍の財産であるジャケットを正当な理由なく所持した事実(連合国占領軍財産等収受所持禁止令違反)のほか、複数の詐欺罪および住居侵入罪に問われていた。原審はこれらを併合罪として有罪判決を下したが、上告審係属中の昭和27年、政令117号に基づき占領軍財産所持の罪について大赦が実施された。
あてはめ
被告人が占領軍のジャケットを所持した公訴事実に係る罪は、昭和27年政令第117号1条83号により大赦の対象となった。したがって、刑事訴訟法411条5号(刑の廃止)の法理に準じ、旧刑訴法等の規定も参照しつつ、原判決のうち当該事実に関する部分は破棄を免れない。一方、大赦の対象外である詐欺罪(刑法246条1項)および住居侵入罪(同130条)については、依然として刑罰権が存続している。これらは併合罪(刑法45条前段)の関係にあるため、犯情の最も重い詐欺罪の刑に法定の加重(同47条、10条)を行った範囲内で、あらためて懲役8月の実刑に処するのが相当である。
結論
原判決を破棄する。大赦のあった事実については免訴とし、その他の罪(詐欺・住居侵入)については被告人を懲役8月に処する。
事件番号: 昭和25(あ)2088 / 裁判年月日: 昭和27年8月29日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】公訴事実にかかる罪について、上告審での判決前に大赦(昭和27年政令第117号)があった場合には、刑事訴訟法337条3号に基づき免訴を言い渡すべきである。 第1 事案の概要:被告人は昭和22年政令第165号違反の罪等により起訴され、第一審および原審で有罪判決を受けた。しかし、上告審の係属中に「大赦令…
実務上の射程
法令改正による刑の廃止や大赦といった形式的裁判事由が上告審で発生した場合の処理手順を示す。実務上、併合罪の一部に免訴事由が生じた場合、判決主文において免訴部分と有罪部分を明示し、有罪部分についてのみ刑を言い渡すという主文構成のモデルとなる。
事件番号: 昭和26(あ)2428 / 裁判年月日: 昭和28年2月12日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】大赦令の施行により免訴の事由が生じた場合、最高裁判所は職権で原判決を破棄し、当該部分について免訴の判決を言い渡すべきである。また、大赦の対象外となる余罪については、刑法等の規定に従い改めて刑を量定し直す必要がある。 第1 事案の概要:被告人は、連合国軍総司令部(GHQ)の許可なくドル等の外国通貨を…
事件番号: 昭和26(あ)2465 / 裁判年月日: 昭和28年1月23日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】公訴事実の一部について大赦があった場合には、当該部分について免訴を言い渡すべきであり、大赦の対象外の罪数については、適法な法令の適用に基づき併合罪として処断すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、法定の除外事由がないにもかかわらず、連合国占領軍の物資(ドル表示軍票以外のもの)を所持したとして、…
事件番号: 昭和26(あ)5157 / 裁判年月日: 昭和27年10月30日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】判決後に大赦があった場合、刑事訴訟法337条3号に基づき免訴の言渡しをすべきであり、併合罪の関係にある他の罪については、改めて刑を量定して処断すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、連合国占領軍の財産である煙草の所持(昭和22年政令165号3条1項違反)およびドル表示軍票の収受の罪に問われ、原…
事件番号: 昭和25(あ)1626 / 裁判年月日: 昭和27年9月26日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】裁判所が諸般の情状により実刑を科し刑の執行猶予を言い渡さないことは基本的人権を侵害せず、また、大赦の対象となった公訴事実については免訴の言渡しをなすべきである。 第1 事案の概要:被告人両名は、共謀の上、昭和24年4月から6月にかけて7回にわたり、神戸市内の占領軍兵営付近の路上で、連合国占領軍の財…