一 本件は昭和二二年政令第一六五號連合國占領軍その将兵又は連合國占領軍に附屬し若くは附随する者の財産の收受及び所持の禁止に關する件第一條違反として不法收受の事實につき起訴したものであることは記録上明らかである。そして右不法收受の公訴事實には不法收受の實事を包含するものであるから不法收受事實について起訴された以上は、不法收受の事實について犯罪の證明が無いとしても不法所持の事實について證明があれば右政令第一六五號第一條を適用し、所持罪として有罪を言渡さなければならないことは所論の通りである。 二 所持罪は不法所持という現實の事實によつて、成立するものであり、且つ所持の開始が數回にわたる場合でも必ずしも所持開始の回數と同數の所持罪が成立するものではなく、所持が一個なりや否やは社會の通念によつて決すべきものである(昭和二三年(れ)第九六五號同二四年五月一八日最高裁判所大法廷判決参照)
一 昭和二二年政令第一六五號連合國占領軍その将兵又は連合國占領軍に付屬し若くは随伴する者の財産の收受及び所持の禁止に關する件第一條違反としての不法收受の公訴事實の範圍 二 不法所持罪における所持の罪數と社會通念
昭和22年政令165號1條,舊刑訴法410條18號,刑法45條
判旨
不法収受の公訴事実には当然に不法所持の事実が包含されるため、収受の証明が不十分であっても所持の証明があれば所持罪として有罪を言い渡すべきであり、その罪数は社会通念により決すべきである。
問題の所在(論点)
不法収受の公訴事実において収受の証明が不十分な場合、裁判所は不法所持の事実について審理し、有罪を言い渡すべき義務を負うか。また、数回にわたり収受した物品の所持罪の罪数はどのように判断されるべきか。
規範
不法収受の公訴事実には、その前提または結果としての不法所持の事実が当然に包含される。また、所持罪の成否および罪数(一個の罪か否か)については、所持の開始が数回にわたる場合であっても、現実の所持の態様に基づき社会通念に従って判断される。
事件番号: 昭和26(あ)284 / 裁判年月日: 昭和28年2月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法上の「所持」の概念については、物の事実上の支配を意味するものであり、原審の解釈に誤りはない。また、被告人の主張する免責事由が認められない以上、当該所持行為を罰することは正当である。 第1 事案の概要:被告人は軍票(軍用手票)を所持していたとして起訴された。被告人は、当該軍票を所持するに至った経…
重要事実
被告人は、占領軍の財産である軍服や衣類等を昭和22年12月から昭和23年1月にかけて計8回にわたり買い受け、不法に収受・所持したとして起訴された。原審は、不法収受罪の併合罪としての立証がないとして無罪を言い渡したが、被告人が一定の物品を現に所持していた事実は記録上明らかであった。
あてはめ
本件において被告人は、昭和22年12月から約1か月間にわたり複数回物品を買い受けており、不法に所持していた事実は容易に推認できる。不法収受の公訴事実には所持の事実が含まれる以上、収受の証明がないからといって直ちに無罪とせず、所持罪の成否を審理すべきである。また、所持は現実の事実によって成立するものであり、収受の回数が複数であっても、社会通念上一個の所持と認められる余地がある。
結論
不法収受事実の証明がない場合でも、包含される不法所持事実の証明があれば、所持罪として有罪を言い渡さなければならない。原判決が所持の点について審理を尽くさず無罪としたのは、審理不尽および法の解釈誤りがある。
実務上の射程
訴因変更の手続きを経ることなく、起訴された犯罪事実(収受)に含まれるより軽い犯罪事実(所持)を認定できるという、訴因の事実上の包含関係と裁判所の審判義務を示す実務上重要な判断である。
事件番号: 昭和23(れ)956 / 裁判年月日: 昭和24年5月18日 / 結論: 破棄差戻
一 一事不再審の原則は判事判決の既判力の一作用に外ならない。元來判決の既判力というものは一旦判決によつて一定の法律關係(刑罰權又は私權等)の存否が確定された以上原則として、爾後は法律上有効にこれを變動せしめないということをその本質とするのである。 二 民事においては裁判所は判決により確定された法律關係については、その判…
事件番号: 昭和24(れ)1926 / 裁判年月日: 昭和25年1月12日 / 結論: 棄却
所持はある物を自己の事實上の支配内に置くことであつて、その支配が他人のためにすると自己のためにするとを問うものではない。そして原判決の判示とその證據とを對照すれば、原判決の認定した事實は、被告人がAから依頼を受けて連合國占領軍の財産であることを知りながら、判示袋二個を同人より受取りこれを自己の自轉車に積み、判示キヤンプ…
事件番号: 昭和24(れ)1728 / 裁判年月日: 昭和25年7月13日 / 結論: 破棄自判
一 第一審判決は、昭和二三年政令第一六五號違反の罪と古物商取締法違反の罪を、想像的競合をなす一罪として重い政令違反罪の刑によつて、懲役一年及び罰金三千圓を言渡した。これに對し第二審判決は右二個の罪を併合罪と見て所論のような各別の刑を併科したのである。しかしながら、第二審の罰金刑の合算額は第一審の罰金額より五千圓だけ多く…
事件番号: 昭和25(あ)3387 / 裁判年月日: 昭和26年9月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白が、強制、拷問、脅迫によるものでなく、また不当に長く抑留または拘禁された後のものでない限り、その自白の真実性を裏付けるに足りる補強証拠が存在すれば、自白と併せて事実を認定することができる。 第1 事案の概要:被告人は昭和24年9月13日、窃盗容疑で逮捕状の執行を受け、同日中に警察署で取…