判旨
被告人の自白が、強制、拷問、脅迫によるものでなく、また不当に長く抑留または拘禁された後のものでない限り、その自白の真実性を裏付けるに足りる補強証拠が存在すれば、自白と併せて事実を認定することができる。
問題の所在(論点)
不当な抑留・拘禁後の自白として証拠能力が否定されるか。また、自白のみで有罪とされることを禁じる補強法則の要件を満たすか。
規範
自白の証拠能力(憲法38条2項、刑訴法319条1項)に関し、任意性に疑いがある(強制、拷問、脅迫、不当に長い抑留・拘禁)事由が認められないこと。また、自白の証明力(憲法38条3項、刑訴法319条2項)に関し、自白の内容が真実であることを裏付けるに足りる補強証拠が存在すること。
重要事実
被告人は昭和24年9月13日、窃盗容疑で逮捕状の執行を受け、同日中に警察署で取り調べを受けた。当初は窃盗容疑を否認していたが、翌14日に本件不法収受の事実について自白した。その翌日の15日、当該不法収受罪につき検察官の請求による逮捕状が執行された。被告人は自白が強制等によるものであり、補強証拠も不十分であると主張して上告した。
あてはめ
まず自白の任意性について、被告人が逮捕された翌日に自白している経緯に照らせば、強制や拷問、脅迫があったとは認められず、また不当に長い抑留・拘禁後の自白ともいえない。次に補強証拠について、第一審が挙げた証拠群は、自白の真実性を裏付けるに十分な内容を有しており、自白とこれらの証拠を総合すれば、犯罪事実の認定は可能であると解される。
結論
被告人の自白には証拠能力が認められ、かつ十分な補強証拠が存在するため、自白に基づき有罪とした原判決に違法はない。
実務上の射程
事件番号: 昭和25(あ)2729 / 裁判年月日: 昭和26年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の公判廷での自白に対し、捜査機関作成の差押調書や領収書等は、独立の証拠として自白の真実性を担保する補強証拠になり得る。また、現行犯逮捕から数日後に録取された供述調書は、不当に長い抑留・拘禁後の自白には当たらない。 第1 事案の概要:被告人Cは、第一審の公判廷において犯行を自白した。これに対し…
自白の任意性と補強法則という基本原則を確認したもの。特に、別件(窃盗)で適法に逮捕された翌日の自白について、不当な拘禁に当たらないとする判断枠組みは、実務上の身体拘束期間と自白の関連性を検討する際の指標となる。
事件番号: 昭和25(あ)2324 / 裁判年月日: 昭和26年5月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の公判廷での自白に、被害者の供述調書や被害届などの証拠を併せることで補強証拠として認め、被告人を唯一の証拠によって処罰することを禁じた憲法38条3項に違反しないとした。 第1 事案の概要:被告人は進駐軍物資不法所持罪等の事実により起訴され、第一審の公判廷において犯行を自白した。第一審裁判所は…
事件番号: 昭和24(れ)1034 / 裁判年月日: 昭和24年12月6日 / 結論: 破棄差戻
一 本件は昭和二二年政令第一六五號連合國占領軍その将兵又は連合國占領軍に附屬し若くは附随する者の財産の收受及び所持の禁止に關する件第一條違反として不法收受の事實につき起訴したものであることは記録上明らかである。そして右不法收受の公訴事實には不法收受の實事を包含するものであるから不法收受事實について起訴された以上は、不法…
事件番号: 昭和26(あ)284 / 裁判年月日: 昭和28年2月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法上の「所持」の概念については、物の事実上の支配を意味するものであり、原審の解釈に誤りはない。また、被告人の主張する免責事由が認められない以上、当該所持行為を罰することは正当である。 第1 事案の概要:被告人は軍票(軍用手票)を所持していたとして起訴された。被告人は、当該軍票を所持するに至った経…
事件番号: 昭和24(れ)174 / 裁判年月日: 昭和24年6月14日 / 結論: 棄却
勾留と自白との間に因果關係が無いこと明らかである場合にはその自白を證據としても刑訴應急措置法第一〇條第二項(憲法第三八條第二項)に違反するものでないことは、當裁判所大法廷の判例とするところであつて(昭和二二年(れ)第二七一號同二三年六月三〇日判決)論旨は理由がない。