判旨
刑法上の「所持」の概念については、物の事実上の支配を意味するものであり、原審の解釈に誤りはない。また、被告人の主張する免責事由が認められない以上、当該所持行為を罰することは正当である。
問題の所在(論点)
軍票の所持罪等における「所持」の意義、および被告人が主張する特殊な取得事情が免責理由(違法性阻却事由または責任阻却事由)となるか。
規範
刑法上の「所持」とは、対象物を事実上支配することをいう。また、当該所持に至る経緯や弁疏に正当な理由が認められない限り、違法性が阻却されることはない。
重要事実
被告人は軍票(軍用手票)を所持していたとして起訴された。被告人は、当該軍票を所持するに至った経緯について独自の事情を主張し、免責の理由がある旨を弁解していた。しかし、原審は被告人の主張する事実関係を認めず、被告人の所為について免責の理由を発見することができないと判断した。これに対し、被告人側が「所持」の解釈の誤りや量刑不当を理由に上告した事案である。
あてはめ
最高裁は、原審が示した「所持」に関する解釈(事実上の支配を指すもの)に誤りはないとした。その上で、被告人が主張する所持の経緯については、原判決において既に事実として認められておらず、これを前提とした議論は採用できない。また、原判決が「免責の理由を発見することを得ない」としている点から、被告人の弁疏は排斥されており、所持罪の成立を妨げる事情はないと評価される。
結論
被告人が軍票を事実上支配している以上「所持」に該当し、かつ免責事由も認められないため、有罪とした原判決は正当である。上告棄却。
実務上の射程
本判決は、刑法上の「所持」の概念が事実上の支配を指すという一般的理解を追認したものである。答案上では、所持罪の客観的構成要件の認定において、特段の事情がない限り事実上の支配の有無で決すべきであることを示す材料となる。ただし、本決定自体は簡潔なものであるため、具体的な免責の判断基準については各個別法の趣旨に依拠する必要がある。
事件番号: 昭和25(れ)1767 / 裁判年月日: 昭和26年3月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法上の「所持」とは、対象物を自己の事実上の支配内におくことを意味し、その具体的態様まで判示する必要はない。また、刑の執行猶予を付すか否かは事実審裁判所の広範な自由裁量に属する。 第1 事案の概要:被告人は、昭和22年政令165号に違反する罪(具体的な対象物は判決文からは不明)に問われた。一審およ…
事件番号: 昭和24(れ)1034 / 裁判年月日: 昭和24年12月6日 / 結論: 破棄差戻
一 本件は昭和二二年政令第一六五號連合國占領軍その将兵又は連合國占領軍に附屬し若くは附随する者の財産の收受及び所持の禁止に關する件第一條違反として不法收受の事實につき起訴したものであることは記録上明らかである。そして右不法收受の公訴事實には不法收受の實事を包含するものであるから不法收受事實について起訴された以上は、不法…
事件番号: 昭和23(れ)956 / 裁判年月日: 昭和24年5月18日 / 結論: 破棄差戻
一 一事不再審の原則は判事判決の既判力の一作用に外ならない。元來判決の既判力というものは一旦判決によつて一定の法律關係(刑罰權又は私權等)の存否が確定された以上原則として、爾後は法律上有効にこれを變動せしめないということをその本質とするのである。 二 民事においては裁判所は判決により確定された法律關係については、その判…
事件番号: 昭和24(れ)1926 / 裁判年月日: 昭和25年1月12日 / 結論: 棄却
所持はある物を自己の事實上の支配内に置くことであつて、その支配が他人のためにすると自己のためにするとを問うものではない。そして原判決の判示とその證據とを對照すれば、原判決の認定した事實は、被告人がAから依頼を受けて連合國占領軍の財産であることを知りながら、判示袋二個を同人より受取りこれを自己の自轉車に積み、判示キヤンプ…
事件番号: 昭和24(れ)2276 / 裁判年月日: 昭和25年11月28日 / 結論: 棄却
自然犯たると行政犯たるとを問はず、犯意の成立には、違法の認識を必要としない。