所持はある物を自己の事實上の支配内に置くことであつて、その支配が他人のためにすると自己のためにするとを問うものではない。そして原判決の判示とその證據とを對照すれば、原判決の認定した事實は、被告人がAから依頼を受けて連合國占領軍の財産であることを知りながら、判示袋二個を同人より受取りこれを自己の自轉車に積み、判示キヤンプ附近から判示高架下附近まで運搬して、その間右袋二個を被告人單獨で所持した事實であることを肯認することができる。從つて判示袋二個は被告人が現實に實力支配内に置いたものであることは明らかであるから、原審が被告人に對し判示物件の不法所持罪に問擬したからといつて、原判決には所論のような法律の解釋を誤つた違法又は理由不備の違法ない。
他人の依頼を受けて占領軍の財産を情を知りながら運搬した所爲と不法所持罪の成立
昭和22年政令165號1條1項,昭和22年政令165號3條
判旨
「所持」とはある物を自己の事実上の支配内に置くことをいい、その支配が他人のためであるか自己のためであるかを問わない。他人から依頼を受けて運搬する場合であっても、現実に実力支配内に置いたといえるならば不法所持罪が成立する。
問題の所在(論点)
他人から依頼を受けて一時的に物品を運搬する場合において、その占有の帰属が他人のためにするものであっても、刑罰法規上の「所持」に該当するか。
規範
「所持」とは、ある物を自己の事実上の支配内に置くことをいう。その支配が他人のためであるか自己のためであるかは問わず、現実に実力支配内に置いているか否かによって判断される。
重要事実
被告人は、Aから依頼を受け、対象物が連合国占領軍の財産(不法な物件)であることを知りながら、袋2個をAから受け取った。被告人はこれを自己の自転車に積み、キャンプ付近から高架下付近まで運搬した。この運搬の間、被告人は単独で当該物件を扱っていた。
事件番号: 昭和26(あ)284 / 裁判年月日: 昭和28年2月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法上の「所持」の概念については、物の事実上の支配を意味するものであり、原審の解釈に誤りはない。また、被告人の主張する免責事由が認められない以上、当該所持行為を罰することは正当である。 第1 事案の概要:被告人は軍票(軍用手票)を所持していたとして起訴された。被告人は、当該軍票を所持するに至った経…
あてはめ
被告人はAからの依頼に基づき運搬を行っているが、袋を自己の自転車に積み、特定の区間を単独で移動させている。この事実に照らせば、運搬中の物件は被告人の「現実に実力支配内」に置かれていたと評価できる。したがって、主観的に他人のためにする意思であったとしても、客観的な事実上の支配がある以上、「所持」にあたると解される。
結論
被告人の行為は物件の不法所持罪を構成し、原審が所持罪の成立を認めた判断に法律の解釈を誤った違法はない。
実務上の射程
本判決は、所持概念が純粋に事実上の支配(実力支配)を指すことを明確にしている。刑事法における「所持」や「占有」の成否が問題となる場面(薬物所持、武器所持等)において、他人のための保管や運搬であっても、独立した支配が認められる限りは所持が肯定されるという論理の基礎となる。
事件番号: 昭和23(れ)956 / 裁判年月日: 昭和24年5月18日 / 結論: 破棄差戻
一 一事不再審の原則は判事判決の既判力の一作用に外ならない。元來判決の既判力というものは一旦判決によつて一定の法律關係(刑罰權又は私權等)の存否が確定された以上原則として、爾後は法律上有効にこれを變動せしめないということをその本質とするのである。 二 民事においては裁判所は判決により確定された法律關係については、その判…
事件番号: 昭和25(れ)1118 / 裁判年月日: 昭和25年10月26日 / 結論: 棄却
一 物の所持とは人がその実力支配下に物を保管する行為をいうのであるから、人が物を保管する意思をもつてこれに適応する実力支配関係を多少の時間継続して実現する行為をすれば、それによつて物の所持は成立するのである。そして一旦成立した所持が爾後存続するためには、その所持人が常にその物を所持することを意識している必要はないのであ…
事件番号: 昭和24(れ)1034 / 裁判年月日: 昭和24年12月6日 / 結論: 破棄差戻
一 本件は昭和二二年政令第一六五號連合國占領軍その将兵又は連合國占領軍に附屬し若くは附随する者の財産の收受及び所持の禁止に關する件第一條違反として不法收受の事實につき起訴したものであることは記録上明らかである。そして右不法收受の公訴事實には不法收受の實事を包含するものであるから不法收受事實について起訴された以上は、不法…
事件番号: 昭和25(れ)1767 / 裁判年月日: 昭和26年3月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法上の「所持」とは、対象物を自己の事実上の支配内におくことを意味し、その具体的態様まで判示する必要はない。また、刑の執行猶予を付すか否かは事実審裁判所の広範な自由裁量に属する。 第1 事案の概要:被告人は、昭和22年政令165号に違反する罪(具体的な対象物は判決文からは不明)に問われた。一審およ…