判旨
刑の執行猶予の可否は、事実審たる裁判所の自由裁量に属する事柄であり、諸般の事情を考慮して実刑を科すことが直ちに憲法13条に違反することはない。
問題の所在(論点)
事実審裁判所が被告人に執行猶予を付さず実刑を科すことが、憲法13条(個人の尊重・幸福追求権)に違反するか、また、執行猶予の判断は裁判所の裁量に属するか。
規範
刑の執行猶予の付与は、事実審裁判所の自由裁量権に属する。裁判所が諸般の事情を総合的に考慮して、執行猶予を付さずに実刑を科すと決定したとしても、その裁量権の行使は適法であり、個人の尊厳や幸福追求権を規定する憲法13条に抵触するものではない。
重要事実
有罪判決を受けた被告人に対し、事実審裁判所が諸般の事情を考慮した上で、刑の執行を猶予せずに実刑を科す判決を言い渡した。これに対し、被告人側は当該判決が憲法13条に違反するものであると主張して上告した。
あてはめ
本件において、裁判所は有罪と認められる被告人に対し、犯情や諸般の状況を考慮した上で刑を決定している。執行猶予は法律上必ず付与しなければならないものではなく、裁判所が個別の事案に応じてその適否を判断する性質のものである。したがって、本件で裁判所が裁量に基づき実刑を選択したことは、憲法が保障する基本的人権を不当に侵害するものとはいえない。
結論
刑の執行猶予を決定するのは裁判所の自由裁量に属するため、実刑を科す判決は憲法13条に違反しない。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
量刑判断および執行猶予の適否に関する裁判所の広範な裁量を肯定した判例である。司法試験においては、量刑不当を憲法違反に結びつける主張を否定する際の根拠として利用できる。
事件番号: 昭和24(れ)2009 / 裁判年月日: 昭和24年10月4日 / 結論: 棄却
一 刑の執行猶豫の言渡をしなかつたことを以て、憲法第一三條に云う基本的人權を侵害するものでもなく(昭和二二年(れ)第二〇一號、同二三年三月二四日大法廷判決及び昭和二三年(れ)第九五〇號同年一〇月二一日第一小法廷判決)又犯情の類似した犯人間の處罰に差異があるからとて憲法第一四條の平等の原則に違反するということもできない(…
事件番号: 昭和28(あ)5511 / 裁判年月日: 昭和30年11月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法定刑の範囲内で被告人に実刑を科し、執行猶予を付さなかったとしても、直ちに憲法13条に違反するものではない。 第1 事案の概要:被告人に対し、下級審が法定刑の範囲内で実刑判決を言い渡し、執行猶予を付さなかった。これに対し弁護人は、実刑を科し執行猶予を付さないことは憲法13条(個人の尊厳・幸福追求権…
事件番号: 昭和25(あ)3246 / 裁判年月日: 昭和26年12月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が裁量権に基づき法定刑の範囲内で実刑を科し、執行猶予を付さなかったことは、直ちに憲法36条の禁止する残虐な刑に当たらない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において有罪判決を受けた際、裁判所は法定刑の範囲内で実刑を科し、執行猶予の言い渡しを行わなかった。これに対し、被告人側は、執行猶予を付…
事件番号: 昭和26(あ)1852 / 裁判年月日: 昭和28年2月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法36条が禁ずる「残虐な刑罰」とは、刑罰の種類そのものが人道上残酷と認められるものを指し、法定刑の範囲内で量定された刑が被告人にとって過重であってもこれには当たらない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において有罪判決を受け、言い渡された刑罰を不服として上告した。弁護人は、選択された刑罰が重す…
事件番号: 昭和26(あ)1034 / 裁判年月日: 昭和27年8月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律の範囲内で量定された実刑は、被告人にとって過重に感じられたとしても、憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」には当たらない。 第1 事案の概要:被告人Aおよび被告人Bに対し、下級審において実刑判決が言い渡された。これに対し被告人側は、当該量刑が被告人にとって過重であり、憲法36条が禁止する「残虐な刑罰…