一 刑の執行猶豫の言渡をしなかつたことを以て、憲法第一三條に云う基本的人權を侵害するものでもなく(昭和二二年(れ)第二〇一號、同二三年三月二四日大法廷判決及び昭和二三年(れ)第九五〇號同年一〇月二一日第一小法廷判決)又犯情の類似した犯人間の處罰に差異があるからとて憲法第一四條の平等の原則に違反するということもできない(昭和二三年(れ)第四三五號同年一〇月六日大法廷判決) 二 舊刑訴法第三六〇條第二項に「刑ノ減兔ノ原由タル事實」というのは刑罰法規が特定の事由ある場合に必ず刑の減兔を爲すべきものとして規定した事由を指すのであつて、刑の裁量の標準となるべき諸般の情状のように、裁判所の裁量に委せられたものはこれに該當せず、從つて刑の執行を猶豫すべき情状あることの如きも、右の法條にいわゆる「刑ノ減兔ノ原由タル事實上ノ主張」ではないこと、既に當裁判所の判例(昭和二二年(れ)第一六七號、同二三年一月二七日第三小法廷判決)の示す通りであつて、今なおこれを改める必要を認めない。
一 刑の執行猶豫の言渡をしない判決と憲法第一三條―犯情の類似した犯人間の科刑の差異と憲法第一四條 二 刑の執行を猶豫すべき情状の主張と舊刑訴法第三六〇條第二項の「刑ノ減兔ノ原由タル事實上ノ主張」
憲法13條,件法14條,刑法第25條,舊刑訴法360條2項
判旨
刑の執行猶予を言い渡さないことは、裁判所の自由裁量の範囲内に属し、憲法が保障する基本的人権や平等の原則に違反しない。また、執行猶予の主張は「刑の減免の原由たる事実」には該当せず、判決でこれに対する判断を示す必要はない。
問題の所在(論点)
1. 刑の執行猶予を言い渡さないことが、憲法13条(基本的人権)や14条(法の下の平等)に違反するか。 2. 執行猶予の付与に関する主張は、判決書において判断を示すべき「刑の減免の原由たる事実上の主張」に該当するか。
規範
刑の執行猶予を言い渡すか否かは、裁判所の広範な自由裁量に委ねられており、特段の事情がない限り、これを言い渡さないことが直ちに憲法13条(基本的人権)や14条(平等権)に抵触することはない。また、刑訴法(旧刑訴法360条2項)上の「刑の減免の原由たる事実」とは、特定の事由がある場合に必ず刑の減免をなすべき旨を定めた規定を指し、裁判所の裁量に委ねられた刑の執行猶予の情状はこれに含まれない。
事件番号: 昭和24(れ)444 / 裁判年月日: 昭和24年7月14日 / 結論: 棄却
しかし、刑の執行を猶豫すると否とは、事實審たる原裁判所が諸般の事情を斟酌して判定すべき自由裁量の事項に屬し、刑の執行を猶豫しない理由が人種、信條性、別社會的身分又は門地により被告人を差別するものでない限り憲法第一四條の規定の趣旨に反するものでないことは既に當裁判所大法廷の判例とするとでころある。(昭和二三年(れ)第七〇…
重要事実
被告人が刑の執行猶予を付されなかったことに対し、憲法13条(基本的人権)、14条(平等の原則)、11条および97条に違反すると主張した。さらに、弁護人は原判決が刑法25条(執行猶予)を適用しなかった理由を判示していない点は、旧刑訴法360条2項(刑の減免の原由たる事実上の主張に対する判断義務)に違反する刑事訴訟法上の違法があると主張し、上告した事案である。
あてはめ
1. 執行猶予を付すか否かは裁判所の自由裁量に属する事項である。たとえ犯情の類似した他の犯人と処罰に差異が生じたとしても、それは個別の事案に応じた裁量の結果であり、直ちに平等権や人権を侵害するものとはいえない。 2. 執行猶予の基礎となる情状は、裁判所が裁量によって刑の執行を猶予すべきかを判断するための材料にすぎない。これは、法規上必ず刑を減免すべきとされる事由(必要的免除等)とは性質を異にするため、判決においてこれに対する判断を明示しなかったとしても、判決不備の違法は存しない。
結論
本件上告を棄却する。裁判所が執行猶予を付さないことは憲法違反ではなく、また、判決においてその理由を逐一判示する必要もない。
実務上の射程
量刑不当は原則として適法な上告理由にならないが、本判決は、執行猶予の不付与が裁量の範囲内であることを確認し、憲法違反の主張や理由不備の主張を排斥する際のリファレンスとなる。特に「刑の減免の原由」の意義を限定的に解する点は、現在の実務においても、必要的減免事由と裁量的減免事由(情状)を区別する論理的基礎として重要である。
事件番号: 昭和25(あ)1230 / 裁判年月日: 昭和26年7月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑の執行猶予の可否は、事実審たる裁判所の自由裁量に属する事柄であり、諸般の事情を考慮して実刑を科すことが直ちに憲法13条に違反することはない。 第1 事案の概要:有罪判決を受けた被告人に対し、事実審裁判所が諸般の事情を考慮した上で、刑の執行を猶予せずに実刑を科す判決を言い渡した。これに対し、被告人…
事件番号: 昭和24(れ)989 / 裁判年月日: 昭和24年9月27日 / 結論: 棄却
一 銃砲等所持禁止令の適用を受ける銃砲が單に彈丸發射の構造を有するのみでは足らず、更に彈丸發射の機能をも備えなければならないことは、論旨の云う通りであつて、同令施行規則第一條第一號にも「銃砲とは彈丸發射の機能を有する装藥銃砲を云う」と明らかに規定されているが、單に「銃砲」と云えばその機能のある銃砲を意味することが常識な…
事件番号: 昭和23(れ)1121 / 裁判年月日: 昭和24年4月2日 / 結論: 棄却
假りに所論のように昭和二三年五月一五日頃所轄警察署へ届出るつもりであつたのが檢舉のために不可能になつたのであるとしても處罰を免るべき權利を強制的に喪失せしめたのでないことは勿論であり被告人に對し刑罰を科することが前記覺書の趣旨に背反しないことも明白である、又前記覺書所定の要件を充して處罰せられないものが他にあるからとい…
事件番号: 昭和25(れ)1212 / 裁判年月日: 昭和25年12月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決における「罪となるべき事実」とは、構成要件に該当する事実、違法性及び責任を基礎付ける事実を指し、その他の情状や証拠の評価に関する事項については、判決にその判断を明記することを要しない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において有罪判決を受けた際、原判決が特定の事項について判断を記さなかったこ…