しかし、刑の執行を猶豫すると否とは、事實審たる原裁判所が諸般の事情を斟酌して判定すべき自由裁量の事項に屬し、刑の執行を猶豫しない理由が人種、信條性、別社會的身分又は門地により被告人を差別するものでない限り憲法第一四條の規定の趣旨に反するものでないことは既に當裁判所大法廷の判例とするとでころある。(昭和二三年(れ)第七〇號、同年五月二六日大法廷判決參照)
刑の執行を猶豫しない判決と憲法第一四條
憲法14條,刑法25條
判旨
刑の執行猶予の可否は事実審の広範な自由裁量に属する。不当な差別的理由に基づかない限り、執行猶予を付さない判断が憲法14条に反することはない。
問題の所在(論点)
事実審裁判所が刑の執行猶予を付さないと判断することが、憲法14条の法の下の平等、および11条の基本的人権の享有を妨げる結果を招来し、違憲となるか。執行猶予の判断における裁量の限界が問題となる。
規範
刑の執行を猶予するか否かは、事実審裁判所が諸般の事情を斟酌して決定すべき自由裁量事項である。ただし、その判断が人種、信条、性別、社会的身分または門地により被告人を差別するものである場合には、憲法14条の法の下の平等に反し違憲となる。
重要事実
被告人が犯した犯罪について、原審は諸般の事情を考慮した上で刑の執行猶予を付さない判決を下した。これに対し弁護人は、犯罪の動機等の諸事情に照らせば執行猶予を付さないことは憲法14条および11条に違反するものであると主張して上告した。
事件番号: 昭和24(れ)2009 / 裁判年月日: 昭和24年10月4日 / 結論: 棄却
一 刑の執行猶豫の言渡をしなかつたことを以て、憲法第一三條に云う基本的人權を侵害するものでもなく(昭和二二年(れ)第二〇一號、同二三年三月二四日大法廷判決及び昭和二三年(れ)第九五〇號同年一〇月二一日第一小法廷判決)又犯情の類似した犯人間の處罰に差異があるからとて憲法第一四條の平等の原則に違反するということもできない(…
あてはめ
執行猶予の判断は事実審の自由裁量に委ねられている。本件において、原判決が執行猶予を与えなかった理由は、被告人の人種や信条、性別等の差別的な要因に基づくものとは認められない。被告人が主張する動機等の諸事情を考慮したとしても、それは原審の裁量権の範囲内の判断といえる。したがって、憲法14条の規定の趣旨に反する不当な差別は存在せず、人権享有を妨げる違法もない。
結論
原判決が執行猶予を認めなかった措置は憲法14条等に違反しない。したがって本件上告は棄却される。
実務上の射程
量刑判断(特に執行猶予の要否)における広範な司法裁量を肯定する判例である。答案上は、量刑不当を理由に憲法違反を主張することの困難さを説明する際や、刑法25条の解釈において裁量権の逸脱・濫用がないかを論じる際の基準として活用できる。
事件番号: 昭和23(れ)1121 / 裁判年月日: 昭和24年4月2日 / 結論: 棄却
假りに所論のように昭和二三年五月一五日頃所轄警察署へ届出るつもりであつたのが檢舉のために不可能になつたのであるとしても處罰を免るべき權利を強制的に喪失せしめたのでないことは勿論であり被告人に對し刑罰を科することが前記覺書の趣旨に背反しないことも明白である、又前記覺書所定の要件を充して處罰せられないものが他にあるからとい…
事件番号: 昭和24(れ)1502 / 裁判年月日: 昭和24年11月10日 / 結論: 棄却
銃砲等所持禁止令違反罪は、銃砲等を所持するを以て直に成立するものであるから、本件拳銃の所持携帯が、假りに數時間に過ぎなかつたとしても、犯罪の成立を妨げる理由とはならない。
事件番号: 昭和26(れ)1758 / 裁判年月日: 昭和26年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】単なる量刑不当の主張は、刑事訴訟法405条所定の上告理由には該当せず、特段の事情がない限り同法411条による職権破棄の対象にもならない。 第1 事案の概要:上告人は量刑が不当であることを理由に上告を申し立てたが、原判決の量刑判断において具体的にどのような憲法違反や判例違反があるのかについては明確な…
事件番号: 昭和25(あ)1230 / 裁判年月日: 昭和26年7月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑の執行猶予の可否は、事実審たる裁判所の自由裁量に属する事柄であり、諸般の事情を考慮して実刑を科すことが直ちに憲法13条に違反することはない。 第1 事案の概要:有罪判決を受けた被告人に対し、事実審裁判所が諸般の事情を考慮した上で、刑の執行を猶予せずに実刑を科す判決を言い渡した。これに対し、被告人…